14. 追放騎士の想い③

「こうして私のことを信じてくれる人がいるだけで救われました。

 結局、私は国が望むような聖女ではいられなかった」


 たった1つのわがままを押し通した結果だ。

 何の後悔もない。



「……本当にそれで良いのかよ?」

「聖女と国は、所詮は打算だけで繋がった関係。

 期待に応えられない以上、然るべき対応が取られただけ。

 私としても、この国には何の未練もありません」


 私の言葉が、強がりでもなんでもないことが分かったのだろう。

 ライトはギリッと唇を噛んだ。


 そして――



「なら、せめて付いていくことを許してくれないか?」


 緊張した様子でそう切り出した。



「ど、どうしてそんなことを?」


 あまりにも都合の良い言葉に、思わず耳を疑った。

 呆然とする私に畳みかけるように、


「こんなふざけた理由で会えなくなるなんて、絶対に嫌だ。

 追放された身ではあるけど、腕には覚えがある。

 絶対に役に立ってみせる。

 頼む、連れて行ってくれ。この通りだ」


 ライトは、ついには頭を下げて私に頼み込む。

 あまりの事態に頭が追いつかない。

 都合が良すぎて、夢でも見ているのかと疑ってしまう。



「良いんですか?

 国外追放ですよ、二度とここには帰ってこられないんですよ」

「覚悟の上だ」


 ライトはどこまでも真摯に頭を下げる。


 心の奥底ではずっと願っていた。

 願いながら、身勝手過ぎて自己嫌悪に陥った。



「そ、そんなこと私にだけ都合の良い話。

 本当に良いんですか?」

「俺のことは何も心配しないでください。

 気の毒に思うなら、どうか俺の手を取ってください」




 それなら――


「こちらからお願いします」


 消え入りそうな声で。

 私はライトの申し出を受け入れた。



「絶対に後悔はさせない。

 誰が相手であっても指一本触れさせない。

 ――必ず幸せにしてみせる」


 返ってきたのはそんな誓いの言葉だった。

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