8. 依頼中の語らい②
そしてあっさりとライトのパーティーに迎えられた。
彼は「遠慮しないで座ってよ」と仲間たちと一緒の席に着くことを勧めてきた。
ライトの班員であろう仲間たちは、口をあんぐりと開けて私を見た。
(バレてる、バレてる!)
どうも聖女だと気づかれたようなので、私はシーッと口に手を当ててジェスチャー。
彼らはコクコクと頷いた。
「みんな、どうしたんだよ?」
「いや、あの。ライト……?」
「なんだよ?」
不思議そうに首を傾げるライトへと、生暖かい視線が注ぐ。
「この子がさっき話した、城で会った不思議な女の子だよ。
こうして見てると何処にでもいる救護スタッフなんだけどな?
城では貴族の令嬢みたいな雰囲気だったんだよ」
「褒めてるんですか? 貶してるんですか……」
「まるで貴族の令嬢みたいだったと褒めてるんだよ。
……本当に、こうして再会するなんてな。
不思議な縁もあったもんだ」
「たまたまってあるものですね!」
実のところ聖女の権威を利用して、追放騎士・ライトの名前があった場所に同行させてもらうようにお願いした。
見かけたのは偶然だが、再会は必然だったとも言える。
それでも私は笑顔で相槌をうった。
今日も楽しそうに話すライト。
そんな笑顔の似合う彼と、「追放騎士」という言葉が脳内で結びつかず――
「追放騎士、でしたっけ?
いったい何があったんですか……」
「ええ、それ聞いちゃう?」
デリケートな話題かもしれない。
それでもライトなら許してくれるのではないかという期待。
案の定ライトはおどけてみせた。
「無理にとは言いませんが……」
「なら想像に任せするよ。
な~に、下らないことさ。
酒場の席で酔っぱらって上官をぶん殴っちゃったとか、そんな感じ!」
へらりとライトは笑ってみせる。
それが何かを誤魔化そうとしているようで……
「全ては聖女様のためだったんだよ。
ライトの行いは人間としては正しく――騎士団員としては間違っていた」
「おい、やめ――」
そう語りだしたのは、ポルクというライトの班員であった。
気の弱そうな小太りの少年は、まん丸な顔に不満の色を覗かせる。
(え、どうしてそこで聖女の名前が出てくるんですか?)
私の疑問に対する答えはすぐに与えられることとなった。
「騎士団の中では、聖女をどう扱うべきかって意見が割れててね。
もっとギリギリまで酷使するべきだ、という過激な意見もあったんだ。
国や騎士団の安全だけを最優先にするなら、それが最善だと考える人も多かったからね」
ポルクの口から語られるのはあり得た未来。
国を守るための道具として、人権すら認められず奴隷のように働かされる未来。
ゾッとしながらも、私は話の続きを促す。
「国のために聖女様を犠牲にするなんて間違ってる!
ライトはそう主張し続けた。
己の持ちうるコネを全て使って権力者に掛け合った。
強引すぎて敵を作ったかもしれない――そして聖女様の人権を守り抜いたんだ」
(私はいつの間にかライトに助けられていたんですね)
私がこうして穏やかな生活を送れているのは誇張抜きにライトのお陰。
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