03.

 朝食を食べ終わって、食器を洗っているとき。


「んぅ」


 彼女の身動ぎ。


「世界救う」


 起きたらしい。


「また、ゲームするの?」


「なるべくはやく、世界を救っておきたくて」


「そうなの」


 ぼろぼろの彼女。それでも、ゲームへの執念は捨てない。目の下には、大きなくまが現在進行形で形成されつつある。


 役所の人。彼女には、たしか巨大電子生命体がどうのとか機械を経てのアプローチがどうのとか、言ってたっけ。


「姉ぇ」


「ん?」


「見てて」


 彼女。


 ゲームしてる姿を見ていてと言われるのは、はじめてだった。


「勝てるか、不安なの。わたしの側に」


「わかった」


 彼女の隣に。


「後ろに」


 言われた通りに、彼女の後ろに回り。彼女を膝の上に乗せる。


「その、ええと、ですね」


「はい」


「胸を。さわって、いただけますでしょうか」


「胸?」


「よろしくおねがいいたします」


 胸をさわるだけなのに。なんで丁寧口調なの。


 彼女の胸をいつも通り、手で握った。手のひらサイズで、張りがあって高密度な胸。


「あっ」


「ん?」


「トップ部分は、その、かんべんしていただけると」


「そうですか」


 と言われても。手のひらサイズなので、胸だけをさわって、なおかつトップにふれないというのは、なかなか。


「ちょっとだけ、わきのしたも、さわっちゃだめですか?」


「わきのしたは、 もっと、かんべんしてもらえると」


 だよね。トップよりもわきのしたのほうが敏感だもんね。神経通ってるもの。


 しばらく試行錯誤して。下からさわり、トップだけを薬指と中指の間を開けてなんとか避けるスタイルに落ち着いた。なんか、コントローラーを握っているような気分。


「いかがでしょうか?」


「よろしいです」


 彼女。コントローラーを握る。


「では、世界救わせていただきます」


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