第20話

ここは………どこだろう。


真っ暗な空間の中に、私はいた。


普通の場所ではない。ここは……夢の中だろうか。


右も左も分からないその空間で、ほんの少しの勇気を持って一歩を踏み出してみる。


すると、踏み出した足が何かを踏み……


『グチョ』


っと、嫌な音を立てた。


不思議に思い、足元を見てみる。


「………っ!?」


喉を押しつぶしたような悲鳴を上げて、口を抑える。


自分が、今踏みつけたものは………



いや、と言った方が正確かも知れない。


その顔に生気は無く、光の無い両の瞳はこちらを見つめていた。


一瞬目があってしまい、慌てて顔を上げる。


そして……気がつく。


真っ暗だった空間が、いつの間にか真っ赤に変わっていた。


まるで……血の色のような赤。


そして、もう一つ気がついたこと。


この空間にある、人だったものは一つではない。


5……10……いや、それ以上だ。 


先程はとっさの事に驚いて、気が付かなかったが……


私はその顔一つ一つに見覚えがある。


ここにある無数の亡骸は………


この世界に勇者として召喚されたが、才能の無かった……


平凡なる者達だ。


この世界と…私の罪の象徴。


サクラくんの前に呼ばれた異世界の人たち……


「……っ!?」


私はまた、短い悲鳴をあげた。


理由は単純。


私の足元に転がっている亡骸たちが…生気のない顔のまま口を開いたからだ。


「どうして?」 「痛いよ…」 「なんで?」

   「話が違う」   「殺さないで…」


その声は……直接頭の中に入ってくる。


そして次の瞬間。


すべての亡骸がこちらを見た。


「「「ねぇ、何でそいつだけ助けるの?」」」


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