第19話

結局俺はアイルと、一つのベッドに二人で寝ることになった。


最後の抵抗として、床で寝ると言ったのだが、「怪我をしているから」と断られてしまった。


俺の体を心配してくれたアイルを無下にすることもできず……こうして今、同じベッドに入っている。


女の子と同じベッド。最初こそドキドキしていたが、案外すぐに落ち着くものだ。


当のアイルは、すでに規則正しい寝息を立てている。


──夜は人の心を弱くする。


俺が命を狙われる立場にあるとアイラに聞いてから、ここまで様々な事があった。


今までドタバタし過ぎていたせいで深くは考えていなかった。


しかし、こうして一人で考える時間があると、どうしても弱気になってしまう。


俺はこれからどうなってしまう?


いつまで人目につかない生活をする?


一体どれほどの人が俺の命を狙っている?


………体が震える。


アイルがすでに寝ていて良かった。こんな姿は見せられない。


……怖い。俺は今、先の見えない真っ暗なトンネルの中にいるんだ。


(香菜のやつ…どうしてるかな……)


思いを馳せるは、日本に残して来たクラスメイト。


世界で唯一、俺を好きだと言ってくれた少女。


彼女は今、悲しんでくれているのだろうか。


…この世界への恐怖と、元の世界への憧れで、最低なことを考えしまう。



……


ーーーいや、駄目だ。それだけは考えちゃ駄目なんだ。


その考えは、俺をここに呼んだ、アイラの否定にもなる。


彼女は本物だった。俺に向けられた彼女の優しさは、本物だったんだ。


だから……それだけは否定しちゃいけない。


アイラのペンダントを両手で包み込む。


夜の静けさが与えた心の弱さを。


ここから先、どうなってしまうのかという不安を。


それらをかき消すように、ペンダントを握りしめる。


だが………それでも…………。


体の震えは止まらなかった。


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