第15話

「アイラ様……本当にこれで良かったんですか?」


後ろから声をかけられる。声をかけてきたのは、リープ・リッヒ。先程、私が眠らせた少女だ。


「リープ……。二人っきりだから、敬語はいらないよ」


「はぁ……。それじゃあ遠慮無く」


一度ため息をもらし、リープが砕けた口調になる。こちらのほうが仲のいい感じがして、私は好きだ。


「これで良かったのかって………アイルを行かせたこと?」


リープはコクリと頷く。


「これで……いいんだよ。アイルが生活するには、この場所は……


優しいアイルにここでの生活は……とても苦しいだろう。


「罪……か。実際に殺したのは私なんだし、あの子が罪を感じる必要なんてないんだけどね……ってなんでニヤニヤしてるの」


「あ…ごめんね。」


そういえばアイルにもなんで笑ってるのーって言われたっけ。


「リープは優しいなぁ〜って思ってさ」


あれ、このセリフも割とデジャヴ。


「はぁ?優しい?私が?」


リープは、何言ってんだこいつ。と言うような顔をしている。


「私……知ってるよ?さっき、実際に殺したのは私って言ってたけど、その役目……本当はアイルに言いつけられてたよね?」


「……誰から聞いたの」


「私、こう見えても偉いんだよ?いろいろなこと知ってるんだから。………それで、リープが変わってあげたんでしょ?あの子や私が恨まれ無いように……最後の瞬間は、わざと嫌われるような事を言ってたんでしょ?」


「違う。それは私を買いかぶりすぎ。変わったのだってあの子に人殺しなんて出来なさそうだったから、それだけだし」


ふふーん、素直じゃないなぁ、この子は。


「それこそ、あの子に殺せるのは…魔物か、アンタに好意のある男くらいのもんでしょ」


「え?最後のどういうこと?」


「アイルは相当のシスコンよ、アンタに彼氏なんかできた日には……血祭りに上げるでしょうね。……ってあれ、もしかしてゼクスのこと好きになっちゃったりした?」


「なっ!?なんで今サクラが出るの!?」


急にサクラの名前を出され、びっくりしてしまう。確かに…最後に大好きだと言われたりもしたが…


それと、私がサクラを好きかどうかはまったく関係ない。


それに、大好きと言ったサクラの真意も分からないし………


というか、本当に取り乱してしまった。思わずサクラの名前を知らないリープの前で、その名前を言ってしまうほどだ。


リープも、ゼクス=サクラだと言う事を理解したのか、特に突っ込んでくることは無かった。


「その反応……まさか本当に……?」


「ちがっ……違うから!!」


少し詰まってしまった。なにやってんだろ私。


「わかった、わかったから」


リープは一応の納得をしてくれたようだが…


先程の私の反応……まるで本当に恋しているみたいじゃないか


「それよりも……」


気を取り直して、別の話をしよう。


実は……リープとしなければいけない話があったのだ。


「私……魔法が使えるんだよね。」


「は?それがどうしたの?」


「最初の勇者を召喚した時に、魔力の減り具合と、残りの魔力を考えて、私が生かせる勇者は6人が限界だと思った」


異世界の人間はここでは生きていくことは出来ない。しかし、私の魔力をつかい、この世界に適応させることで、生きていけるようになる。


「サクラでちょうど6人目だよね?本当なら、私の魔力は無くなっているはず……どうして魔法を使えるの?」


リープは黙って顎に手を当てた。私が言いたいことを理解したようだ。


「リープなら………ううん、リープだから分かるよね?最近、私達の人じゃない部分が何かの影響を受けて、力を増してる」


「それは……私も実感してた。」


「何かが…起こってるんだよ。本当に、世界が滅んじゃうような何かが」

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