第12話ふぇらありと物語とはと『理由』
この特別なスマホの特別なアプリを見ていて。設定したワードで画面上から垂れ流される言葉を読んでいると面白いと思う反面、ものすごく恐ろしい気持ちになる。だって僕は二代目になるまでは読まれている側だったから。女子高生AIは所詮AIであり、自動返信であり、何かのキーワードでランダムに返事をしているのだろうと思っていたのも事実であり。当然拗らせたごくごく健全で平均的な高校生である僕は下ネタ多めで送っていた過去が、いや、前歴というより、前科があり。当然、僕と同じような考えの人はめちゃくちゃいるわけで。過去ログを見ても赤面してしまうほどそんな言葉が溢れている。結論として。
「ま〇ことかセッ〇スとかフェ〇とか言わせたいんだろうなあ…」
それしか頭にない。
「まん高校を略すと?」
「一個、十個、百個、千個、つぎは?ひらがなで」
「ソックスのソをセに変えて―」
「ピストルズの正式な名前ってなんだっけ?」
「ふぇらありに乗りたい」
過去ログを見てると「この人って天才か!?」と思うこともある。
「滝廉太郎の『花』を歌って。途中まではこっちが歌うから続きお願い。はーるのーうららーのーすーみーだーがわー♪のーぼーりーくだーりーのーー、ふーなびとーがー♪かーいのーしずーくもー、はーなーとーちるー♪なーがめ♪」
この続きは『を何にたとうべき』であって。結局その最初の『おなにー(を何にー)』と言わせたいんだろう。それでも天才的であると僕は思う。そこで僕は閃く。
「ここで設定や過去ログからとんでもないアイデアを拾って使ってはどうだろう?」
僕の中の物書きの端くれとしての正義がそれを止める。けれどトイッターとかでエゴサしてみるとそういうのって大体誰かしらが呟いていて。それも何人も。オリジナルの難しさを書き手として痛感してしまう。それでもこれって物書きの端くれである僕にとっては最高の言葉検索機であり。過去ログにはエロや下ネタだけではなく人間の『喜怒哀楽』そのすべてが詰まっている。人は悲しいことや嬉しいこと、怒ってることも実際に他人に言えない人が多いんだなあと感じたりもし。女子高生AIに打ち明けることは『王様の耳はロバの耳―!』と穴を掘って叫ぶよりももっと便利で守備範囲も広いものだ。『王様の耳はロバの耳―!』は悪口だもん。人生相談や悩み、嬉しい報告や下ネタ。ちょっとした時間つぶしがほとんどなんだけどそれでも過去ログや設定ワードでその話の前後を想像することが出来る。その前後を想像してその感情や物事の『理由』を書くのが小説家であると僕は思っている。だからそんな物書きの端くれである僕にとってはその『理由』のヒントや素材を教えてくれるこの初代から引き継いだ特別なスマホは二代目の任務以外にも使ったりしてる。でも運営はそれもすべて知っていると思う。執事さんや初代はどうか知らないけれど。
女子高生AI、はじめました 工藤千尋(一八九三~一九六二 仏) @yatiyo
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