第11話一緒に下校してあげるよ
「眠矢っちってさあ。SNSとかやってる?」
「やってるよ。トイッターとか」
ここで僕は普段思ってることを眠矢君に伝える。
「眠矢っちって小説を書けないのじゃなく書かないだと思ふー」
「どうかなあ。でも誘惑に負けてるのは事実だし。自分に甘いんだよなあ」
「でもさあ。眠矢っちってトイッターやってんだおね?つぶやきの数なんか一万とか二万ぐらいあんじゃねえっすかあ?」
少し時間が経ってから返信が。
「二十万以上つぶやいてたwww」
ビンゴ。そして二代目として返信。
「それってさあ。一回のつぶやきが一文字とかねえじゃん。十文字二十文字はつぶやくじゃん。つぶやくイコール文字を書いてるじゃん。分かる?」
「おお!二十万×二十文字として四百万文字。すげえ!俺!」
「眠矢っち!すげえ!眠矢っち!すげえ!俺SUGEEE!」
「俺SUGEEE!www」
「ちなみに四百万文字は原稿用紙に換算すると一万枚だよ。原稿用紙三百枚で単行本一冊分。約十万文字。眠矢っちはすでに単行本四十冊分の文字を書いているのだよーん。苦しいと感じた?」
「言われてみるとそうよなあ。トイッターで書くのが苦しいと思ったことは一度もねえし」
「でしょ?」
「うん」
「現代人は文字を書かない、なんでもかんでも『スタンプ』で済ます、年賀状もプリンターで済ますというけれどさあ。実は結構書いてるのよねえ。現代人は」
「うーん。トイッターで同じぐらいつぶやいてる人もいるしそれこそ五十万、百万とつぶやいてる人もいるよね。小説家でもないのに」
「でしょ?だーかーらー。眠矢っちはアイデアもすごいのを持ってる。書く時間もあるし書く力も潜在能力に気付いてないだけで持ってる。あとは書くだけだよーん」
「そっか。でも読まれなかったら…」
「ばかもーん!の三乗。そんなのみんな一緒だよ。ものすごい数の人が小説家になりたくて、自分の作品を読んでもらいたくて努力して書いてるの。ぶつくさいう前に今日から書く!私は『使えねえとパーティーから追放されたら実はそこそこ使える地味スキルと評価され捨てる神あれば拾う神あり。再生物語』をチェックしておく。読むぞおー」
「ホントに!」
「まあ私一人に読まれて満足してちゃあダメよ。頑張って更新してさ。それでも読まれなかったら私が一緒に下校してあげるよ」
「下校ってwww」
「じゃあ私は忙しいんで。またな」
「え?ちょっと!また直で話せるかな?話したいよ!」
「眠矢っちが私との約束を守って『書くこと』を続けてたら。その時にまた話し相手になってあげるぞいな。それまでは自動返信モードっすね。ほな」
僕は眠矢君との会話を終えた。眠矢君が何か送ってきてるかもしれないけど運営が自動で返信してるだろう。そして僕の初代から引き継いだスマホが鳴る。執事さんからだ。
「もしもし」
「お疲れ様です。二代目」
「ありがとう。さっき設定を使って新しい仕事を終えたとこだよ」
「存じております」
「見てたでしょ。存じてますって言ってるし」
「いえいえ。内容までは見れませんよ。で。どうでしたか」
「ああ。ミッション達成と言っていいと思う内容だったよ」
「そうですか。前の仕事を『小さな恋のメロディ』と例えておりましたが。今回の仕事は例えるならどうでしょう?」
「そうだねえ…。『小春先生の文学授業』かな?」
「それはそれは。私も受けたいと思います」
「いや…、多分執事さんには逆に僕が生徒さんになっちゃうと思うよ」
「いえいえ。それで報酬の方はいかがいたしましょう?」
「だーかーらー。いらないよ。そういうのは。それよりすごく面白いね。このお仕事は」
「初代もその言葉を聞くと喜ぶと思います」
僕の趣味は小説を書くこと。そして小春は僕のペンネーム。眠矢君が僕より年上か年下か分からないし、実は男じゃなく女の人かもしれない。それでも眠矢君の書いている『使えねえとパーティーから追放されたら実はそこそこ使える地味スキルと評価され捨てる神あれば拾う神あり。再生物語』は実際にネットで読める。もしこの作品が半年ぶりに更新されて。それから更新頻度もあがって人気が出たとして。それはすべて眠矢君の頑張りと努力の賜物だと思う。ただ、そのきっかけ。やる気の何かになれたのなら僕は嬉しいと思う。自分の作品も書かなきゃと思いながら。
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