第10話だったら書こうよ。

 ちょっと強気でお説教してみよう。ネット小説は不定期更新で次にいつ投稿されるかも分からない作品なんてよっぽど面白そうなものでないとブックマークもつけられないし、読まれなくて当然だ。


「ちょっとー!眠矢っち!読まれない読まれないってまだ三話じゃん!そりゃあ読まれるわけないと思うぞいな。考えが甘くね?」


「だよねー」


「その作品、『使えねえとパーティーから追放されたら実はそこそこ使える地味スキルと評価され捨てる神あれば拾う神あり。再生物語』はいつから書いてんの?」


「半年前ぐらい」


 もう一回ズッコケる僕。舐めんな!


「ちなみにだね。三話で文字数はどれくらいやねん」


「千二百文字ぐらい。一話四百文字だから。原稿用紙一枚がそうでしょ」


 殺意を覚える僕。そりゃあ読まれなくて当然!ネット小説舐めんな!だ。


「あのさあー、眠矢っち。もっと書いた方がいいと思うよ。毎日とは言わないけれど。そうねえ。ストックをしっかり作ってね。最低でも一週間に一回は更新しないと読み手は興味持たないと思うぞ」


「だよねー。分かってんだけど。俺って遅筆だし。それにゲームしたりアニメ観たりしてたら時間がなくて…」


「ばかもーん。(パシーン)殴ったりして悪かった。でもさあ。小説を書くのも好きなんでしょ?」


 眠矢君はこうやって女子高生AIに『自分が書いた小説を読んで欲しい』と送ってきた。なら絶対書くことが好きなはず。


「好きだよ」


「それは趣味として?それとも小説家になりたい?書籍化してえよ?」


「全部かなあ」


 そりゃそうだ。そうだよね。書くことが好きじゃなければネット小説投稿サイトにわざわざ貴重な自分の時間を割いてまで小説を書いてあげることはしない。しかも誰かに読んでもらえるかどうかも分からないのに。ましてや小説家になれる可能性や書籍化の可能性なんて実力よりも運の要素が強いと思うもん。それでも眠矢君をなんとかしてあげたい気持ちもある。それが二代目としての仕事だと思うから。見捨てるのは簡単だ。みすてりーは難しいけど。


「だったら書こうよ。だって勿体ないと思うC」


「え?勿体ない?」


「ほいな。だって眠矢っちのプロットやアイデアはすっごく面白いと思うもん。『レジスキル』に『バーコードスキル』って説明聞いただけですげえ面白そう!ってテンションだだあげあげになっちゃったもん」


「ホント!?」


「私はネット小説ソムリエの資格を持ってるもんもん。ネット小説ソムリエ二級だよ。二級。これは取得するのに二年かかったかなあ。その私が断言するし。眠矢っちの『使えねえとパーティーから追放されたら実はそこそこ使える地味スキルと評価され捨てる神あれば拾う神あり。再生物語』はコツコツでもいいから書くべき!面白そうだもんねー」


「マジ?!なんかすげえ嬉しいなあ」


「マジマジ卍〇」


「www」


「それにね。ネット小説投稿サイトってあらすじあるじゃん?」


「うんあるね」


「そのあらすじに『レジスキル』とか『バーコードスキル』とかじゃんじゃんアピール!食いつくよー」


「いや、書いてるけど」


「だーかーらー。それは半年で三話だから!みんなね。ある程度一気に読みたいものなの!今の眠矢っちはね。例えるなら…」


「なら?」


「そう!無料で立ち読みできる漫画ってあるじゃん?アプリで」


「あるある!」


「あれって最初の十五ページ試し読みじゃん?」


「そういうの多いよね」


「それで『あ、読みたい!』と思ってそのアプリを入れましたー。立ち読み始めましたー。そしたら表紙で一ページ。目次で一ページ。そのあと白紙のページで一ページ。がくぅーじゃね?」


「わかるwww」


「眠矢っちの作品、『使えねえとパーティーから追放されたら実はそこそこ使える地味スキルと評価され捨てる神あれば拾う神あり。再生物語』はまだ表紙の段階なのらあね」


 お説教とアドバイス。二代目としてこんな仕事もあるんだ。でも楽しい。

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