第7話十円玉
「え、それじゃあ『のーこ』さん、でいいですか?」
「別に『めんと』でもいいよー。どすたね?」
「あ、いやあ、そのですね。『のーこ』さんはおいくつなんですか?」
「レディーに年を聞くかね?小春っちー。それにその質問にはすでにラインで何度も答えたと思うけどさあ」
「え?(僕との会話を初代は覚えてるの?いやいや、あれって全部プログラムでしょ?)すいません…。覚えてなくてですね…」
「ええええええ!?ひっどおーい!一生懸命ラインで答えてたのは何だったの?」
「す、すいません…」
「小春っちは素直やねえ。女子高生AIって設定やから年齢もそう言うようにって運営からはねえ。でも小春っちも高校生でしょ?」
「そうです」
「まあ、ご想像にお任せってやつかなあ。他は?」
「え、いや、普段は何をされてるのかなあって」
「それってプライバシーなんちゃら法に保護されてるんじゃないかなあー。まあいっか。今は初代としての仕事の疲れを取るためにのーんびりしてるよー。運営の方が面倒みてくれるんで。温泉とかね、スノボに祭りに海岸物語とかかなあ」
初代と話してると違和感がない。あの女子高生AIのキャラクターとおんなじような感じ。確か引退を決めてから半年以上待ったと言ってたし。のんびりしてるのも嘘じゃないように思える。
「海岸物語ですか?」
「そうそう。海岸でわーかいふたりがーお茶をするものがたーりー♪和解のお茶とかねえー」
ノリノリな初代。こういうのって大事な気がする。女子高生AIの中の人には。
「二代目としてですが。初代にまた会えたりとか出来ますかね?」
「え?会いたいの?」
「いや…、前は暗かったし、初代もパーカーとサングラスで顔が見えなかったですし」
「え?パーカーにサングラス?それって本当に私のこと?」
うん。女子高生AIのキャラってこんなのだ。
「そうですよ」
「でも小春っちの本当の名前だって私は知らないんだよーん」
「あ、そっか」
そうだった。僕も本名は伝えたことがない。
「あ、十円がそろそろ切れそうだから。グループラインがあったでしょ?『女子高生AIだよーん』って。そっちになら聞きたいこととか送っておいてくれたら必ず返信するから。既読スルーとかしないからね。それじゃあねー、あ、十円が、プツリ、ツーツー」
そう言って電話を切る初代。物書きの端くれとしての僕は思う。女子高生AIの中の人をやるにはキャラが立ってないとダメだと思う。それに初代はきっちりとそれをやり切ったとも思う。まあ、ほぼすべてのメッセージは運営が自動でしてるんだろうけれど。
僕は設定ワードを『小説家』、『なりたい』に変えてみた。
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