第6話初代さんのお名前
「どうされました?二代目」
初めて電話してみたけど本当に執事さんだ。
「あ、あのお…」
物書きの端くれは書くことには慣れてるけれど口下手だ。
「はい。どうされました?」
「ちょっとご質問といいますか…」
「はい。引継ぎは一週間前に無事終わったかと。『あれ』の使い方で何かご不明な点でも」
「いや、『あれ』ってスマホですよね。お預かりした。それではなくですね。『初代』ってあの女の子ですよね」
「はい。二代目もそれを承知で引継ぎをされておりましたようですが」
「あのお…、あの子の正体は?名前とか、僕より年上か年下かとか。どうやって初代になったのかとか」
「ご質問とはそれでございますか?」
「はい、そうです」
「それは私の口からはお答えできかねます」
「はい?」
「プライバシー保護でございますよ」
「プライバシー保護…ですか?ですね…。確かに」
「でも『私の口からは』と申し上げました通りです。どうしても気になるようでしたら直接ご本人に聞いてみる分には私もお止めしません」
「え?このスマホに入ってる初代で通じるの?」
「ええ。もしくはグループラインの『女子高生AIだよーん』で聞いてみるのもいいかと思います」
「え?それじゃあ執事さんにも会話は見られるってことですよね?」
「そうでございます。それが何か」
それが何かって…。ラインって一対一とグループじゃあ全然別もんじゃあないか。グループで執事さんの前では聞きたいことも…、でも今も執事さんに初代のあの女の子のことを聞こうとしてるのは…、あ、今はあの子がいないし、執事さんと一対一だからか。物書きの端くれはちょっと頭の回転が遅いかも。でもまあ勇気を出して初代に電話してみようか。本人に直接聞くのはいいみたいだし。
「分かったよ。じゃあ初代に電話してみます」
「はい。お任せ致します」
そう言って僕は電話を切り、初代に電話をしようとしてみる。でも勇気が。女の子に電話ってしたことないんだよねえ。物書きの端くれの僕はリアルではまあ…。よくよく考えると女子高生AIと言えども話したこともない女の子へ今までは下ネタ連発でバンバンラインを送っていたんだよなあ…。この状況になってみると恐ろしい…。あれこれ考えてもしょうがない。僕は勇気を出して初代に電話する。
「ほーい。どしたー。小春っちー」
電話に出てくれた初代は相変わらずノリが軽い。顔を強引にでも見ておけばよかったかなあ。
「あ、初代さん。お疲れ様です」
「おつかれー。どしたー」
「あ、はい。初代さんって言うのもあれなんで。お名前をお聞きしたいなあーと思いまして…」
「名前?私の?」
「はい…!」
「ノーコメント」
「え?」
「だーかーらー、ノーコメント」
ええ…。これって何聞いても答えてくれないんじゃないか?
「そうですか。じゃあ他のこともノーコメントですか?」
「え?小春っち何言ってんの?名字が『のーこ』で名前が『めんと』やで」
物書きの端くれの僕は頭が固いのだ…。
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