隣の彼女。
昨日、僕のマンションの呼びベルが突然ピンポーンとなった。
「はーい」と玄関に向かい、覗き穴を覗くと見たことのない女の人が立っていた。
ゆっくりドアを開けると、彼女は菓子折を持ち、ニコッとした。
彼女は隣に引っ越してきた薫という女性だった。髪はウェーブが緩くかかり、花柄のワンピースを着ていた。
彼女の顔を見て、僕はあることを思い出していた。
「もう終わりにしよう」
「え?」
「だから、もうこれっきりにしよう」
そう三年ほど前に言われた元カノの言葉だった。薫は驚くほど、元カノに似ていた。絶対に別人ではあるのは分かったが。
「あ、あの。どうかしましたか?」
という薫の声に我に帰った僕は
「なんでもありません」と言い、彼女の持っていた菓子折を受け取った。
ゆっくりドアを閉め、心の奥に閉まっていた哀しみの扉を再び開けてしまったことを後悔した。
彼女が隣に住んでいること、
彼女とすれ違うことが不安で仕方なかった。
僕はどうしたらいいのだろうか。
やっと忘れたはずなのに。
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