記憶。
「あ、はい。今、ちょっと渋滞にハマっちゃってて、、、。はい。なるべく急いで行きますので、すみません」
取引先とのミーティングに遅れそうになり、車内で僕は慌てていた。
だが、慌てれば慌てるほど道路は混雑し、全く動かなかった。
「もう何なんだよ、こんな時に」
そんな時、ラジオから懐かしい曲が聞こえた。この曲は、数年前に付き合っていた彼女が好きだと言って、カラオケに行くと毎回歌っていたバラードだった。
記憶とは不思議なものだ。
この曲を聞くと、今まで焦っていた気持ちがずっと消え、彼女との記憶が思い出される。
ただ部屋の中で話したり、映画館に行って映画を見たり、海に行ったり、写真を取りあいっこして、馬鹿笑いしたり。
そんな楽しい思い出の中に、彼女の涙を浮かべた顔が混ざって通り過ぎる。
曲が終わったタイミングで、ようやく渋滞が動き始めた。
「もしもし、あと30分ほどで迎えると思いますので、よろしくお願いします」
そう言って、また再び少しずつ前に進む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます