隠し事。

君はなにも知らずに、

今日も僕の隣で寝息を立てて眠っている。

愛らしい顔で。

だけど、僕にはその顔が愛らしいければ、愛らしいほど、憎いのだ。


あの日はちょうど梅雨の真っ只中で、

大粒の雨が降っていた。


僕は仕事の帰り道、

少し先を歩く見覚えのある赤い傘を

見つけた。


「あゆみ?」

僕が君を見つけ、話しかけに行こうとすると、僕の視界には、見知らぬ男が映り込んだ。

僕はひたすら立ち尽くし、

今までの思い出が走馬灯のように流れ始めた。


それから、僕の隠し事が始まった。


僕は二人の後をつけた。

事実を知れば、傷つくと気がついていたけれど、僕はそっと二人の後をつけずにはいられなかった。


僕は君にだけは今までどんなことがあっても、嘘や隠し事だけはしないように

なるべく正直にしようとしてきた。


だけど、もうそれも終わり。


今日も

君はあの男の所に行くのだろうか。

君も僕にずっと隠し事をしていたんだよね。

でも、それはお互いにいつかはバレる。

仕方ないことだったのかな。


ねぇ、僕たちはいつまで隠し事を続ける?

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