日常の暮らしの中で


 リモートワークになり、家に篭る時間が長くなった。まさか、こんな世の中になるなんて思いもしなかった。


 満員電車に乗り、会社に行き、営業に走り、同僚とビールを酌み交わし、仲間と馬鹿笑いをしたり、彼女とデートしたり。

そんな事が普通に出来ない日が来るなんて。


 今もパソコンを開いて、やらなければならない仕事が山積みなのに、こんな事を考えながら、感慨に浸ってしまう。


別に誰が悪いわけでも、誰のせいでもない。

だが、ただ家にいるというだけで、世間から取り残されたような感覚に陥る。


そんな時、チャイムが鳴った。

彼女だった。

久々に彼女の顔を見た気がする。


「入っていい?」

「あ、うん」


玄関の中に入った途端、彼女は僕をそっと抱きしめた。


「元気でよかった」

とそう言った。


「僕は大丈夫だよ」

と戯けて言ったが、本当は僕も会いたかった。


緊急事態宣言があけて、会いに来たのだ。

彼女はキッチンで手を洗いながら、

「ねぇ、何食べたい?」

と僕に声を掛ける。


当たり前だが、こんな平凡な日々が

何よりも一番幸福であり、

人は一人では寂しくて生きていけないのだと、彼女の笑顔を見て感じずにはいられなかった。

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