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「おーい、おーい……」
かすかに声が聞こえる。
「おーい……こりゃダメかな、もう……強過ぎるんだよお前らは。いつも言ってるだろ? もう少しだけ手加減しろってさあ……」
「すみません、正太郎さん」
段々と戻ってきた意識の中で全く聞き覚えのない太い声がしたと思った、その矢先、
「つーか、君もいつまで寝てんだよ! 」
「うっ! 」
確実に聞き覚えのある声と共に襲ってきた痛みによって一瞬にして視界がハッキリとした。
目の前には、良く知ったような初めて見るような顔。
「……所、所長? 」
「おー、起きた起きた。おはようございま~す。今日は出が早いんだねえ」
「……なんですか? これ? 」
「おいおい、なんですか? って……君はやっぱり面白いねえ……何だと思う? 」
無言で固まる僕に、所長は出来の悪い子どもに言い聞かせるように言う。
「うーん、そうかあ、じゃあ俺が特別にヒントをあげよう。君は今、手首と足首を結束バンドでまとめられて、周りを三人の黒いスーツを着た厳つ~い男に囲まれています。あ、ちなみにココ俺の部屋ね。さて、な~んだ? 」
「……捕まったってことですか? 」
「おお! 大正解! さすが俺が拾っただけのことはあるね~」
そう言って所長はニコニコしながら僕の頭を犬を撫でるようにヨシヨシとかき回す。
「でも、ダメじゃないか。ホラ、コレ、忘れたんだろ? あれほど口酸っぱく言ったのになあ……」
先程の表情とは一転し、今にも泣き出しそうな顔でそう言った所長の手の中では僕の家の鍵が揺れている。
「本当に、本当に、すみませんでした!すみませんでした!」
必死に謝る僕に三人の男達が迫る、
「テメエ、正太郎さんの言いつけ破っといて、すみませんでしたで済むと思ってんのか! 」
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