epilogue.

「ごめんなさい。告白、して、しまって」


「僕は」


「あなたのことを。好きだと、言ってしまった」


「あなたのやさしさを」


「僕は。勘違いして。ばかみたい、ですね」


「ごめんなさい。本当に」


 ちがう。


「僕は。あなたのことを、なにも分かっていない。わかってなかった」


 ちがうの。


「告白のことは」


「忘れて、ください」


「僕は。あなたに。ふさわしくなかった」


「あなたに溺れるようにして。僕は。あなたを傷つけてしまったかも、しれないのに」


「僕は」


 雷。


「あ、ああ。そうですね」


 ごめんなさい。背中に。


「いえ」


 わたし。こわいんです。


 あなたに、きらわれてしまうのが。


 今だって。


 こうやって、気持ちを。


 伝えられるのが、こわい。


 あなたのやさしさを。


 うけとめるのが、こわい。


 こわいから。


 踏み出せない。踏み出せないんです。


 ごめんなさい。


 私が。


 喋れないから。


 何も、できないから。


「ごめんなさい。僕のせいです。僕が、あなたの日常に、無遠慮に立ち入ったから」


 いいえ。


「あなたのことを、勝手に。好きに」


 わたしは。


「あなたの声を。僕はあなたの声になろうとして。あなたに。やさしさを押しつけた」


 わたしが。喋れないせいで。


 あなたのやさしさを、わたしが独占して。


「僕は。僕は」


「あなたの側にいるべきではない。そう、思いました。あの紫陽花を見ているあなたを。そうしてしまったのは。僕だから」

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