編み集める

 小説を書こうとしても全然言葉が出てこないぜ……! という悲しみから、この日記的な文章を綴り始めたわけなんですけども。併せて、他の人の文章に触れる、ということをなるべく積極的に行おうと最近心がけて――ええと、なるべく努力しております。(言い直した!)(だってスマホゲーム楽しくてついそちらに時間が搾取されるんだもん)

 カクヨム上でも、私の作品へ何かしら反応を下さった方のところにリンクを辿ってお邪魔してみたり、あるいは、参加させていただいた自主企画経由で作品を拝読したりしています。私とは全然違う文体で綴られていたり、私では思いつかないようなキャラクターが登場していたりと、目から鱗のような作品が沢山で、読み飽きなくて楽しいです。


 そんな、小説を書くことへのリハビリの一環として、何か「小説の書き方」について書かれた本も読んでおきたいなあと。そう思って、先日図書館から借りてきたのが、北村薫さんの「北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く」(新潮社・刊)でした。いやーこの本図書館で見つけたときはテンション上がりました! 元々北村薫さんは大好きな作家さんでして、あの方の美しい流れるような文章は憧れなのです! そんな作家さんが創作について語って下さっているとか読むしかないよね!!! と。

 この本は北村さんが母校の早稲田大学で受け持っていらっしゃった文章についての講義を、一冊の本としてまとめたものです。過去の文学作品や映画など様々な芸術作品を例に引きながら、小説を書くということ――文章のテクニックのようなものではなく、「書く」ためにはどのような視点を持てばよいのか、というような精神的なところを、丁寧に語ってくれています。

 大学講義での喋り口調のまま文章にまとめられていることもあって、凄く読みやすく、面白いですよ。よろしければぜひご一読を。

 

 で。宣伝をしたかったわけではなくてですね(笑)。

 この本を読んでいて、自分にも予想外に重なる部分があって面白かったので、それを書いておこうと思ったのが今日の記事なんです。前置きめっちゃ長いね……ごめんなさい。

 

 本の中というか、北村さんの一連の講義の中で、編集者さんをお呼びして、お話を聞く、という回があったんですよね。どんなお仕事をされているのか、どんな思いで作家さんと向き合っているのかなど、リアルな編集者さんのお声を聞いているのですが。

 その中で「詩の編集」について触れた部分があったのです。どの作品を選び、どのような順番で並べていくのか、詩の編集するときは小説以上にセンスが必要――といった内容だったと思います。(ごめんなさい、貸出期限が近くてもう返却してしまったので、正確な文章を引けないんですが)

 この編集者さんのお言葉を拝読していたとき脳内で叫びましたよ……「あああああわかる!」と(笑)。

 

 実は私一度、詩集の編集をやったことがあるんです。

 といっても、物凄く個人的なレベルです。間違っても実際の本の編集を仕事でやった、とかではないです(笑)。なので、先の編集者さんのお言葉の本質をどこまで理解しているのかは微妙なのですが。それでも、自分自身の経験と物凄く重なる部分があったんですよね。

 

 親友に凄く詩を書くのが上手な子がおりまして。私が勝手に「詩における師匠」と崇めている方です。

 私の書く詩はどうしても散文的というか、詩のくせに状況描写をがっつりと入れがちで、物語のようになってしまいがちなんですよね。説明的だし、詩の中で登場人物の存在が目立ちすぎてしまうというか。本来詩って、言葉を綴る主人公の存在感を薄めて、短い言葉でも読者に共感をさせるものだと思うのです。どうしても私はそれが苦手で、語りすぎてしまうんですよね。主人公としての視点が強すぎて、読者に共感してもらいにくい。

 一方で、親友の詩は、良い意味で空白があるんですよね。語りすぎずに、でも、その世界を的確に表す、核となる言葉は外さない。その詩を取り巻いている状況は詳しくは分からない、でも、凄く言葉が響く。そんな感じというか。私とは全然違うからこそ、彼女の詩が大好きで。だから、勝手に「師匠」だなんて読んでいるわけです。

 その師匠である彼女の詩集を作ってみたんですよね。


 彼女はブログで詩を発表していたんですが、そこではただ時系列順に作品が並んでいるだけだったので、まずは作品を全て抜き出し、特に「好き!!!!!」って思った作品をピックアップ。どの作品も好きでしたが、全部を載せると数が多すぎて飽きてしまうので、あえて数を絞りました。

 その上で、似たような作品は同じページ内にまとめてみたり、或いは、対比的なテーマを扱った作品はあえて裏表のページにしてみたりと、詩集全体におけるそれぞれの作品の配置を決めていきました。その作品の内容を考え、詩集全体のバランスも踏まえて配置していくのは、パズルのようで本当に面白かったです。


 同時に、印刷する媒体も決めました。普通、詩集は冊子でまとめることが多いですが、あえてポストカードサイズの紙に印刷して、はがきホルダーにしまう形にしました。

 というのも、詩って、一つながりになっている小説とは違って、必ずしも決まった順番で読む必要はないんですよね。どこから読んでも良いし、どこかを読まなくてもいい。日によって読む順番を変えたっていい。前述したように、編集者(=私)による作品の並べ方、というのは最初にありますが、それに従わなくたってもちろん大丈夫。

 そんな自由さを表現したくて、ポストカードの形にしました。はがきホルダーであれば、中身の入れ替えも自由にできますからね。

 はがきホルダーのポケット数に従って詩集全体のページ数が決まり、そして集める詩の上限数を決めたのも同じタイミングです。ここで更に作品数を絞り込む必要が生じて、ぐぬぬぬぬ……と悩みまくったのを覚えています。


 印刷する媒体も決まり、載せる作品とその並べ方が決まったら、最後は紙面作りです。専門的なDTPソフトなんて高額なものはもちろん持ってないのでWordで頑張りました(笑)。詩の内容を生かせるよう、フォントにも凝ってみたり。大きな空白が生じそうなところには、詩の内容に合わせてイラストを配置してみたり。(イラスト素材集には本当に助けられました……)

 ちなみに詩集の表紙は、あえてタイトルだけにしました。イラスト等を付けることで変にイメージを固定したくなくて。Wordのワードアート機能使っただけですが、フォントのデザインが良かったおかげで、シンプルだけど可愛く仕上がったので満足でした。

 そして、ポストカードサイズの用紙に両面印刷、はがきホルダーにしまって出来上がり、です。


 親友には誕生日プレゼントの一つとして贈ったのですが、物凄く喜んでくれて。私が勝手に作ったものなのに、詩のセレクトや順番のこと、デザインのこととかも含めて沢山褒めてくれて。ああ、作って良かったなあ……と心底思いました。

 彼女の詩が大好きだからこそ、それぞれの作品が持つ美しさや、彼女の世界観を生かす形で、詩集を作りたかった。そのためには、どんな形にすればいいんだろうか。試行錯誤しながらも、芯にあったのはその思いです。その思いが彼女に伝わったからこそ、あんなに喜んでくれたのかもしれません。



 何ていうか、途中から同人誌の作り方みたいな記事になっちゃいましたね(笑)。ただ、超個人的なレベルとはいえ、編集作業をできたのは、自分にとって本当に良い経験になりました。


 読み手のことを考え、個々の作品の内容を考え、作品全体のバランスを考えながら取捨選択を繰り返す。合わせて作品の発表媒体なんかも考えてみたりする。

 詩や小説を作り上げるのは、自分自身の奥深いところに潜っていく感覚ですが、編集作業は、遠いところから全体を俯瞰するような感覚です。頭の違うところを使って行う表現方法とでもいいますか。それがとても新鮮で、面白かったんですよね。

 できればこの感覚を、詩や小説を作る際、どこかに生かせればいいんですけど。長編を書くときとか生かせるかなあと思いつつ、未だに長編は書いたことがないので生かせていません。悲しい。いつか……いつか……!



 ずらずらと書き連ねてきちゃいましたが、流石にこの辺で締めますね。ということで、表現の本を読んでいたらふと思い出した、編集の面白さについて、でした。



 ちなみに。親友の詩集を編む際。

 詩集の一番最後に、私の詩もそっと混ぜ込みました。

 彼女の詩がとてもとても大好きで、読ませてくれてありがとう、って思いを、どうにかして伝えたくて。彼女の作品に呼応するようなイメージの詩を作って、編集後記代わりに配置しました。

 それにもとても喜んでくれたのを鮮明に覚えています。


 詩を書く人間だからこそできた編集方法なのかな、なんて。今でもちょっとだけ自画自賛しています。


追記:

カクヨムにも上記の詩を載せてみました。よろしければ。

「風花」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921262062/episodes/1177354054926747821

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る