第19話
「やぁミザリーじゃないか? 久しぶりだね。あれから何度かお店には行ったんだけど、辞めちゃったんだって」
「あ、アダム様。お久しぶりでございます。あの私のお腹を見て頂けますか。貴方のアダム様のお子でございます」
「それは本当かい? もし本当だったら俺と結婚して貰えるかい?」
「えぇ! 今すぐにでも」
「それはちょっと無理だな。子供が生まれるまでは駄目だよ」
「あの…… 私…… この子の事で実家を 追い出されて、住む家も…… お金も無いんです」
「そうなんだ、じゃぁ子供が生まれるまでの間は、知り合いの所で過して貰えるかい? 寝る所と、食事には困らないと思うけど、そこのお手伝いはして貰う事にはなるけどね」
「はい、アダム様と結婚できるなら何でもします」
そう言って連れてこられた場所は、いわゆる売春宿だった。
借金のかたで連れてこられた女性が、男性に奉仕をする場所。
この世界では売春防止法などは無いので堂々と営業している。
「ん? どうしたの? ここじゃダメな理由とかある? 別に客を取る訳じゃ無くて、お店のお掃除やなんかを手伝うだけだから、寝床も食事もちゃんと用意するし、俺の子供が産まれたらちゃんと結婚もするんだから、後何か月かの我慢だよ?」
「は、はい。私頑張ります。アダム様とお腹の子供の為に」
◇◆◇◆
「ねぇアダム、ミザリーを売春宿で働かせてるの?」
「アゲハ様人聞きが悪いなぁ、あそこの売春宿の掃除とかさせてるだけだよ」
「よくあの気位の高いミザリーがそんな仕事してるわね?」
「そこはほら、俺愛されてるから。それに本当に俺の子供が産まれるんだったら、結婚しても全然構わないと思ってるよ? 俺の子供の母親ならね」
「へぇ、良い所あるじゃん」
「そう? 俺に惚れてくれてもいいんですよ? アゲハ様」
「えぇ、だってミザリーとしたんでしょ? あの女と姉妹は嫌だよ」
「ひでぇな」
「あなたの子供かどうかなんて解る方法はあるの?」
「方法は知りませんけど、産まれて来た赤ん坊を見て、俺が愛せると思えば、諦めるしか無いですね」
「そうなんだ……」
それから半年ほどが過ぎ、意外にもミザリーは売春宿での清掃を頑張り抜いて無事に出産を迎えた。
産婆さんと共に、アダムは立ち合い出産を希望した。
この世界では一般的ではないシステムらしいけど。
そして、陣痛が始まり、ミザリーは元気な赤ん坊を産んだ。
予定日が一月近くも遅れたせいもあって、とても大きな赤ん坊だった。
「おめでとうミザリー、元気な男の子だよ。君にはあまり似て無いから父親似かな? さぁ抱いて上げて」
「アダムは満面の笑みで、赤ん坊を抱きかかえて、ミザリーに渡すと。ミザリーは叫び声を上げて気を失った」
アダムから手渡された赤ちゃんには、狼の茶色くてふさふさな尻尾と、狼耳が生えていた……
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