第2話

 私は婚約者のディビットに婚約破棄を突き付けられて、意識を失った。

 そしてすべてを思い出した。


 歌舞伎町のキャバ嬢だった頃の記憶を。


 今更貴族令嬢だった事なんか何の役にも立たない…… 訳でも無かった。


 洗練されたマナーやダンス、そして前世では必死で塗りたくって、描き加えて、抑え込んで、盛り上げて、無理やり作り上げていた美貌が、天然で備わっている。


 そしてこの世界にある酒場は、いわゆる居酒屋の様なパブしか無かった。

 この世界でキャバクラやったらボロ儲けじゃん。


 それに、貴族やお金持ちの間では一夫多妻が当たり前だし、イコールお金持ちの奥様はみんな寂しい筈だよ。

 この世界の男性たちは、みんなスタイルは抜群だし、イケメン比率は超高いし、ちょっといい服着させて、髪形とか整えさせればホスクラだって絶対需要有るよ。


 やってやる。

 私が、この王都カーブキンタウンを牛耳ってやるよ。


 この世界では、男性も女性も素材が滅茶苦茶いい。

 街の若者達でも、私がキャバ嬢時代に身に付けたメークを施せば、みんな俳優や女優の様な、見た目になる。


 私はサンドラに相談したわ。

「ねぇサンドラ、ちょっとした飲食店を始めたいの。協力して貰えるかな?」

「私お料理とか苦手ですよ?」


「乾き物とかでも十分だけど、近所の有名店からテイクアウトすればいいから、気にしないで良いよ」

「でもそれだと全然儲からないんじゃないですか?」


「まぁ私に任せなさい。物件は見つけないとしょうがないけど、大事なのは場所だよ。大通りに面し過ぎてても駄目、だからと言って不便でも駄目。広さは最初のお店だから50坪位がいいわ」

「あの。それなら私の家がぴったり条件にあてはまりませんか?」


「使わして貰って良いの?」

「昔は、薬店をしてたんですよね。父さんが薬師だったから」


「そうなんだ。じゃぁ早速内装工事を手配しなきゃね」



 そんな感じで、異世界キャバクラ作戦がスタートした。

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