第91話思わず怒鳴ってしまう

「それもそうね。 それに、これからさらに幸せになっていくというのに、マイナスのことばかり考えてちゃ勿体無いよね。 どうせなら幸せな未来の事を考えた方がよっぽど有意義だわ」

「そういう事。 わかってるじゃない」

「そりゃぁ、私だからね。 当然よ」


 そして、いつもの調子が戻ってきた私は、心の中で眞子に感謝を述べるのであった。





「うぅ……緊張する……」


 そして月日は流れ、今日は結婚式の当日である。


 式の時間が近づいて行く度に私の緊張は高まっていき、かなり気持ち悪い。


「大丈夫か? 顔が真っ青だぞ」

「だ、大丈夫じゃないかも。 胃の中のものを全部吐き出してしまいそう……オェ……ッ」

「本当にやばそうなら式の時間を無理言って遅らせてもらウカ、後日にずらしてもらうか? なんだかんだで俺にとっては結婚式も大事だけど美奈子の方がもっと大事だからなっ」

「いやいや、私の体調が悪いだけで式を遅らせたりキャンセルとかあり得ないから。 今日来てくれた方々にも申し訳ないし、何よりも水樹に申し訳ないから……」

「何を言ってんだ。 結婚式はやり直せるけど、美奈子は一人しかいないんだから結婚式か美奈子かと言われれば迷う事なく美奈子を取るくらいには、美奈子の事が大事なんだよ」

「あ、ありがとう…… 。 と、とりあえず一旦横になるわ」


 私の事を心配してくれる水樹には悪いのだが、緊張しすぎて気持ち悪いとはとてもではないが言えない雰囲気である。


 その為、式の時間を遅らせたり、後日に延期にしたところで、式の時間が近づくと同じように気持ち悪くなるんだから無駄な行為である。


 今日時間通りに開催するというのが結局のところは一番の対処法なのである。


「水樹さん、どうせこのバカは緊張しすぎて気分が悪くなているだけだから気にしなくて良いわよ。 そんな事よりも、せっかくの晴れ舞台でこんな状態になる人よりも、私と結婚した方がいいと思うんだけどな?」

「き、貴様ッ! こんな時にまで私の旦那様になる水樹を誘惑してっ!! いくら妹といえど本当に許さないわよっ!?」


 まさか、こんな時にまで水樹を誘惑しに来るとは、我が妹ながら思わなかたので思わず怒鳴ってしまう。


 というか両親も両親でこの妹をしっかりと見張ってなさいよねっ!!


「どうやら気持ち悪いのも治ったみたいね、お姉ちゃん」

「……へ?」

「貸しいちだから、しっかりと覚えておいてよ? それじゃぁ、向こうにいるねっ」

「ぐぬっ……」


 そして妹はそれだけ言うと両家の親族が集まっている、隣の仕切りの向こう側へと逃げて行くではないか。

 

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