第90話増える一方

「あの時はありがとうね。 何だかんだでかなり精神的にも助かったから」

「いえいえ、お互い様よ。 そんなの」

「しかし高校時代は、私たちは何だかんだで腐れ縁で、大人になってもあの頃のように馬鹿なことを二人でして、笑っているんだろうなぁ、と漠然的に思っていたのだけれども、いざ大人になってみると確かに腐れ縁はこうして続いているのだけれど仕事だ結婚だ妊娠だと、あの頃の想像とは少しだけ違ってるのがなんだか、私たちも歳を取ってるんだなぁーってしみじみと思ってしまう時があるわ」


 そして眞子が少しだけ懐かしそうな表情をしながらそんな事を言う。


「確かに、それは凄い分かる。 そう言えばそれこそ、想像していたのと少し違うけれども、それは結局あの頃想像していたものよりもさらに幸せになっているからなんだって、そんな感じの事を水樹に昔言われて、ハッとした事があったわ」

「あらやだ、さすが水樹くんね」

「そうでしょう、そうでしょうとも」


 もっと私の、もうすぐ旦那様になる水樹の事を褒めるがよいっ。


「でもうちの旦那も、環境が変わろうとも君が俺を好きなままなら俺も君を好きでい続ける。 その事は変わらない、的な事は言われたわよ?」

「本当、あんた達は今も昔もバカップルよね」


 しかし、そこは木田君とバカップルで有名な眞子である。


 水樹の事を褒めたフリをして、それさえも自分の旦那の惚気話へと持って行く為の布石であったらしい。


 まったく、油断も好きもありゃしない。


「いや、アンタにだけは言われたく無いわね」

「まぁ、私達は昔以上にラブラブで愛し合っているからね。 そこは仕方ないのかと」

「そのの点に関しては私達もあの頃とは比べ物にならないくらいには愛し合ってるしラブラブよ」

「…………」

「何よ? アンタが言い返して来ないって珍しいわね」

「いや、さすがにアンタ達二人の愛の巣を見たら否定のしようがないというか何というか」

「いやいや、普通のアパートの一室よ? 2LDKの」

「その普通に見える端々に幸せオーラが滲み出ているというか何というか。 このアパートを訪れる度に見るからに増えていく子供用の様々な物を見ると、幸せなのがいやがおうにも伝わってくるからさ……」

「何を言ってんだか。 またブルーになりかけてるわよアンタ。 それに、次は美奈子がこうなる番なんじゃ無いのよ。 ちなみに、私は子供が生まれる前に新居に引っ越すんだから今から子供のモノを買わなくてもいいって言ってるんだけど、旦那も義理実家も私の実家も聞きやしない、増える一方よ」

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