第92話初孫

 しかしながら妹のお陰で緊張が解けたのも事実である為怒るに怒れないのが何だか悔しくもあり、感謝すらしている。


 流石我が妹と言ったところか。


 しかしながらやりようは少し考えれば他にもあったと思われる為、私の旦那様になる水樹に対して、しかも花嫁という私がいる前で私ではなく妹と結婚した方が良い等とぬかした事は、それとこれとは話が別である為許しはしない。


 そんなこんなで何とか体調も回復して、本番である。


 まず親族と近しい友人のみで明らかにわざと片言に話しているであろう欧米系の神父に永遠の愛を誓い、キスをして、次に友人を含めた大勢の人数がいる会場に移り、ケーキ入刀やら手紙で両親を泣かせたり友人の余興で盛り上がったりと、結婚式は大成功。


 二次会の会場として貸し切りで予約していた(というか臨時休業にしてくれた)真子夫婦の焼き鳥屋で再度どんちゃん騒ぎをして、初めの緊張は何だったのだろうと思える程、振り返ってみるとあっという間の一日であった。


 今はまだ、結婚式の余韻が強くて水樹と結婚したんだという実感は湧かないのだけれども、これから子供が出来たりなんだりして少しずつ、水樹と結婚したんだというのが妄想から現実に変わった事を実感していくのだろう


 そんな事を私の横で泥のように眠っている水樹の左手薬指にはめられている結婚指を触りながら思うのであった。






 あれから約一年が過ぎた。


「あぶぶぶぶーっ」

「きゃいきゃいっ」

「あばばばばばーっ」

「きゃっ、きゃっ」


 私は今現在女の子を出産して、後は退院に向けて病院で療養中である。


 そんな私なんか目もくれず(それはそれで寂しくもある)水樹が目じりを限界まで下がったデレデレな顔でガラスの向こうにいる私たちの赤ちゃんに向けて必死にアピールしている。


 その光景は滑稽でもあり、そして幸せな光景でもある。


 そして水樹の隣では赤ちゃんからすればおじいちゃんになるお父さんが水樹以上に興奮し、目じりを垂らしてデレデレの表情で赤ちゃんを見ている。


「まったく、お父さんったら……デレデレしちゃって」


 そんなお父さんにお母さん(赤ちゃんからすればおばあちゃん)はデレデレになってしまった自分の旦那の姿を見て、反面教師にしているのかグッと理性でなんとかデレデレになってしまうのを抑えているのがまるわかりだ。


「なんだ? 我慢せずにお前も見れば良いだろう? 可愛いぞ? そんなんだとおばあちゃんよりおじいちゃんと呼ばれる方が早いかもしれないねっ!!」

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