第70話私も罪な女である2
セックスをしてみたいという欲求は確かにある。
でもそれよりも今の年齢にあった恋愛を楽しむべきであろう。
燃えるような恋も良いけれど、楽しみは後に取っておき、ゆっくりと、そしてできるだけ長くじっくりと味わうべきだと言う母の教えを聞き、確かにそうだと思ったからである。
別に、一年後には別れると言う訳ではないのだ。
むしろ末長く一緒に人生を歩んでいくつもりである。
ならば、今幸福に満ち足りているにも関わらず先に進む必要もないだろう。
その先は大学生、いや社会人になってからでも遅くないし、万が一を考えれば責任が取れるようになってからでも十分遅くはないだろう。
だけれども、水樹がどうしてもと言うのであれば話は別である。
そう思ってはいるのだが、水樹も水樹で私と同じ考えらしくキスよりも先へ進もうとはしてこない。
男ならばこの私という最高級の餌が目の前にあればつまみ食いをしたいと思うのが男ではないのか? と小一時間は問い詰めたくなるのもまた事実なわけで。
だけれども、キスだけでこれ程までに幸せになるのにその先があるだなんて、もし知ってしまったらどうなってしまうのか興味があると共に不安でもある。
あぁ、幸せだ。
「全く、キスひとつでこれ程までにトロけた表情をしやがって。 俺じゃなかったらとっくの昔に襲われているぞ、美奈子」
「うるさい。 一発で幸福ゲージが満タンになるんだから仕方ないでしょうが」
「まぁ、その気持ちは分かる」
「逆に何で水樹は私を襲わないの?」
「そうだな……理由は襲いたい理由も襲わない理由もそれぞれあるんだが、やっぱり今の俺じゃ責任が取れないからかな。 今出来てしまったら恐らく俺は高校を辞めて仕事をし始めると思うんだけど、やっぱり将来的には良い大学に出て良い会社に就職して、良い嫁さんが出来るだけ安心して快適な生活で住める空間を作って、そしていつ出来ても良いように万全な状況でってのはあるかな。 でもそれは所詮理想であって、俺の理性が間違い無くもたないからお互い高校を卒業すれば避妊に気をつけてってはなるとは思う」
なんか、推測するのと実際に言葉で言われるのとでは嬉しさがまったく違うのだとお見知らされる。
はっきりって卑怯だ。
「どうしたんだよ、急に黙って」
「いや、そうだろうなぁとは思っていたけれども、実際こうして言われて、私の推測が正しいのだとわかったら、想像以上に嬉しいというか、私愛されているんだなぁーって思って……」
「お前って奴は……」
「何? 引いた?」
「本当に可愛い奴だな。 罰として抱きしめてやろうっ!」
「きゃぁっ!?」
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