第69話私も罪な女である
◆
今年は色々あった。
初めての事も、苦手な事も、不得意な事も、全て隣に水樹がいるだけで楽しい思い出に変わって行くから不思議であると共に、こういう日々がこれからも続いて行くようにと願う。
「と、言うわけでみかん取って来て頂戴」
「何が『と、言う訳で』だよ。 自分で取って来れば良いだろ?」
「玄関横のダンボール箱に入ってるから」
「え? 無視ですか? そして何で俺まだ了承していないのに俺が取りに行く前提で話を進めているんだよ」
「うるさいわね。 愛する彼女のために身を粉にして働きたいと思うのが男性でしょう? だから私がその願いを叶えてあげようとしてんじゃない。 そう、これはいうなれば自演事業よ慈善事業」
「何が慈善事業だよ。 それに美奈子の理論で言えば、男は仕事、女は家事って事になるから彼氏の為に家の事を献身的なサポートで支えるのが女性ってことになるが?」
「…………」
「…………」
「コタツから出たくないだけでしょう? だったら取りに行くくらいしてくれても良いじゃない」
「そのコタツの魔力にどっぷりハマってしまっているのは美奈子もだろう?」
外はすっかり寒くなり、今日に至っては雪まで降っている始末。
そんな日にコタツから出ろと言うのは死刑宣告に近いほどの発言である。
彼女に対してその態度は何んだと言いたいところだけれども、私も水樹と同じくコタツムリ一族故に、私が出て取りに行くという答えはない。
そして、どちらからともなく近づいていき、最終的には二人寄り添う。
みかんがなくても、体と体が触れある距離にいる、ただそれだけで幸せである。
「今年も色々あったね」
「そうだなぁ。去年も色々あったけど今年は今年で色々あったな……」
この、二人でまったりする時間が私は大好きだ。
そしてそれ以上にイチャイチャする時間の方が好きである。
「どうしたそんな表情をして。 もうそろそろお前の家族が帰って来るんじゃないのか?」
「そうだけど、帰って来るまではイチャイチャできる……」
私たちはセックスこそしてはいないもののキスまでならば二人の時間ができた時には絶対するようになった。
言い換えればキスの味にハマった。
お互いに触れているだけで幸せになれるのだ。
キスなんかすればもう頭が真っ白になってしまうくらい幸せを感じてしまう。
もはや中毒とも言えよう。
好きな人とのキスの字を一度でも知ってしまったら、知らなかったあの頃にはもう戻れない。
そう、私は大人の階段を着実に登っていっているのである。
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