第66話海4
「ねぇ」
「どうした」
「幸せだね。 この幸せがずっと続けばいいね」
不意に美奈子がそんな可愛らしい事を言いながら俺に体重を預けてくる。
そして思う。 こんな日が、美奈子が隣にいるのが当たり前の日常がずっと続いていきますように、と。
「ああ、そうだな。 一緒に幸せを作っていこうな」
「……うんっ」
◆
海。
目の前に広がるのは一面海。
後ろは山。
即山。
海か山かと選ぶ必要がない程には山である。
と言っても海か山かと言われれば断然海なので、山は視界に入れない。
それでも枕詞に「どちらかといえば」という言葉がつくのだが。
それでも、山なら水樹もセット、海は水樹は来ないと言われれば断然山である。
それだ水樹は偉大である。
というか愛している。
さあ、近所の子供達(特に女の子)よ、とくと見よ。
これが、このイケメンで、私だけ(ここ大事)に優しくて、思いやりがあって、あぁもう水樹の良さは見れば分かるから、兎に角この最高な水樹は何を隠そう私の彼氏なのだ。
「お兄ちゃんっ! 将来私と結婚しようっ!!」
「ハハハハハ、覚えていられたらね」
「えぇーーっ、な私と結婚しようよっ!!」
「どうしよっかなー。 一緒に遊びに来ていた男の子たちじゃ駄目なの?」
「あいつら、ほんとーに子供なのよねぇ」
「ほんと。デリカシーもないわ。 今だってこうして馬鹿みたいに海で泳いでるし」
「毎日毎日泳いで飽きないのかしら?」
「飽きないんじゃない? ほんと、子供よね」
「でも元気一杯で良いじゃないか」
私の、彼氏だよね? なんで一気に二人も婚約をしているのだろうか?
例え子共と言えど、口約束だと言えど、婚約は婚約に変わりない。
ませやがって。
これならまだ年相応に元気一杯な男の子達の方が可愛らしいわっ!!
「でも、俺には大切な人がいるからね。やっぱり結婚は無理かなぁ」
「えぇーっ!? 嘘つきっ!」
「誰よその泥棒猫はっ!」
しかし、残念。
水樹には私という名の正妻がいたのだ。
でも貴女達は男を見る目があるわね。
その点は誉めてあげるわ。
喉が渇いた為、少し遠くの自販機に買いに行き、ほんのちょっと目を離しただけで水樹の周りに女児が集っていた。
子供と言えど彼女達も女なのだろう。
そして木田ではなく水樹を選んでいるあたりは誉めて使わそう。今だけだぞ。
「ねぇお姉さん。 これから俺たちと良い事をしようよ」
覗きも飽きてきた所だし、そろそ帰ろうかと思った所でいきなり田舎のDQNといった感じの男性3人組に声をかけられる。
最悪だ。
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