第61話彼氏の両親2

 …………いっそ殴るか?直近の出来事なら記憶を飛ばせるのでは?


「辞めなさい、美奈子」

「はっ、私ったらっ!」


 危ない所であった。


 もし水樹が止めてくれなければ私は間違いなく闇堕ちして彼氏である水樹のご両親を殴っていた事だろう。


 想像しただけでも恐ろしい。


 もしそうなっていたら私とご両親との仲は最悪となり、水樹との結婚も大反対されて摘み出されること間違いないだろう。


 危うく幸せな未来が砂上の城のごとく消えて無くなる所だったわ。


「全く、まぁその良くも悪くも基本的には本能に忠実で裏表がない美奈子だから好きになったんだけど……少しその猪突猛進具合を抑えるように意識していかないとな。それに、両親もいるならいるって言ってくれよ。美奈子がテンパって人の道外す所だったじゃないか」

「ごめんごめん、早く会いたくて我慢出来なかったんだもの」

「まぁまぁ良いじゃないか」


 さり気なく好きと言われて悪い気はしないのだが、水樹の言う通り起きてからでは遅いのだ。


 起きる前に感情をコントロールする癖は身に付けなければならないだろう。


 そして私の次に、水樹は両親へ苦言を告げるのだが、それを聞いた母親は悪びれる様子も無く言い訳を言うと『おほほほほ』と笑って誤魔化し、父親はなぁなぁにして流そうとしている。


 その光景を見て水樹が『普通の両親』と言っていた事が何となくではあるものの分かった気がするのと、何だか仲良くなれそうだとも思う


「あ、申し遅れましたっ! わ、私は今水樹君とお付き合いさせて頂いております、山田美奈子と申しますっ! こ、これ、つまらない物ですがどうぞっ!」


 そしてとりあえず、彼氏の両親とあったのならば、当初の予定とは場所がマンションの中と外という違いはあるものの考えていたセリフを少しだけ吃りつつもなんとか言い終えて、水樹と一緒に選んで購入したお土産を渡す。


 因みに選んで来たお土産は水樹曰く『コレ私とけば間違いない』と言っていた塩ケンピである。


 少しだけ高かったものの、物産展巡りデートをしながら一緒にあれでもないこれでもないと選んでいる時間はそれはそれで楽しかった。


 因みに水樹と一緒に物産展デートをすると何処からか聞き付けたのか私の両親に軍資金込みでお使いを頼まれたのだが、もしかしたら私の部屋に盗聴器が仕込まれているのでは? と水樹に相談したところ「顔に全て出てたし、物産展と呟きながらググってたらそりゃバレるだろう」と指摘された。


 それは即ち私がそんなアホ面下げて生活していたというのか?

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