第41話今時の小学生でも分かる
それから私達は、暑さなどどこ行ったのだと言わんばかりに可愛い動物たちに夢中になりひたすらスマホのシャッターを切っては動画を収めたりして過ごし、気が付けば今日一日も終わりに近づいていた。
これ程までに楽しいと、そして帰りたくないと思えたのは初めてではなかろうか?
動物園ってこんなに面白い場所だったっけ?と疑問に思った時、そのわずかな疑問から帰りたくないのではなく高城と離れたくないのだと、だから帰りたくないのだという自分の気持ち気付いてしまった。
それは何故か。
そんな事、今時の小学生でも分かる。
気付いてしまった私は胸が締め付けられるような気持になる。
こんな気持ちになるのならばいっそ自分の気持ちなど気付きたくなかったとさえ思う。
だからこそ私は無意識のうちに気付かない様にしていたのであろうし、無意識のうちに化粧やファッションを意識し始めていたのだろう。
それら全ては私が高城の事を異性として意識しているという言い訳の仕様も無い裏付けではないか。
「どうした?急に黙って………」
「…………何でもない」
そんな私を心配してくれる高城に対して何だか申し訳なく思う。
クラス、いや学校一のヒエラルキーのその頂点に間違いなくいる高城が学校でもヒエラルキーの底辺に位置する私如きに付き合ってもらって………。
そして私たちは初めの楽しい雰囲気など嘘のように暗い雰囲気でとぼとぼとオレンジ色に染まった空を眺めながら帰路に就く。
あれ以降高城が気を使ってくれて何も聞いて来ないでくれるのが有難く思うもそこはかとなく心苦しい。
そして私たちは集合場所であった電車の駅に到着する。
気付く前までであれば普通に帰路に付けたのだが、気付いてしまった今となっては叶うはずがない分かっていても、いや叶うはずがないと分かっているからこそ高城と離れたくないという、一秒でも良いから長く一緒に居たい気持ちが沸き上がってくる。
その感情を必死に蓋をして抑え込みながら帰路に着こうと決心し、別れの挨拶を口にしようとしたその時、私はそれを口にする事ができなかった。
目の前には高城の整た顔、そして唇には過去一度感じた事がある柔らかな感触で口を塞がれていた。
何秒間私たちは唇を重ねていただろうか。
数分の様にも、数秒の様にも感じる。
ただ重ねるだけのキスなのだが、それがたまらなく私にとってはどうしようもない程高揚感や幸福感が私の中で一杯になり溢れかえる。
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