第40話あろうはずがない



暑い。


誰が何と言おうと暑い。


目の前に見える動物達も日本の誇る暑さにやられてぐったりしているではないか。


こんな日に外に出歩くなど自殺行為でしかないと私は思う。


あ、あの暑さでぐでっているカワウソっ!!すっっっっごく可愛いっ!!写メ連射で撮らなきゃっ!!


「ほらっ!!高城も見て見なさいよっあのグデカワウソっ!!可愛いっ!!」

「死にかけのゾンビみたいな表情から無垢な少女の様な表情までコロコロと良く変わるお前も十分に可愛いけどな」

「………………また心にもない事を言って」


例の事件から二週間が経った。


今現在私はというと、あの日のお礼として高城から隣の県にある割と大きな動物園へと訪れていた。


初めは例の件もあって恥ずかしさもある上に、夏特有の地獄の様な灼熱の暑さも相まって断ってしまおうかとも思ったのだが、高城と一緒にという事を想像した時なぜか私は動物園へ行く事を了承してしまい、今こうして二人で動物園へと来ているのである。


因みにあれから私は眞子のお姉ちゃんに弟子入りを果たし、メイクを練習していたりする。


就職活動をするにしても覚えておいて損はないしね。


しかし、そのメイクも汗で流れ落ちそうである。


手持ち式扇風機が無ければ今頃化けの皮が剥がれ落ちてしまっていた事だろう。


とはいうものの剥がれ落ちた所で付け焼刃の素人メイクなどすっぴんとどれ程変わるのかというのは考えてはいけない。


そしてなんだかんだで清楚系メイクに合わせてファッションリーダーうえむらで揃えて来た清楚系コーデで武装してきたのだが、まるでコスプレをしているような感じで、それはそれで楽しかった。


その時、今度眞子とコスプレイベントに参加してみようかしら?と言うと『これでお洒落に目覚めない辺りがお姉ちゃんらしいわ』と妹に言われた事は忘れはしない。


言われたら言い返す、倍返しである。


そしていざ動物園へと到着したは良いものの、もう既に夏の暑さでやられてしまいそうである。


カワウソは可愛いけど、それはそれこれはこれなのだ。


暑いものは暑い。


しかも、高城からあんな事を言われた瞬間余計に身体が暑くなり、あまりの暑さに眩暈がしてきそうである。


まさか、先程の高城の言葉で私は照れてしまっているのか?と一瞬思うものの、それは無いと頭を振り思考をクリアにする。


高城如きの言葉で私の心が揺れ動かされる等あろうはずがないではないか。


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