第3話そういうトコだぞっ!!!
「その言い方だと俺がいつも遅刻しているみたいじゃないか」
「みたいじゃなくて遅刻しているから言っているのよ。ほら、時間は有限なんだから早くイベントクエスト周回するわよ」
グランのアバターなのだがエルフを主として作られているキャラクターであり、その為リアルの世界ではあまりお目にかかれないレベルのイケメン男子と言った感じである。
そんなエルフなのだがその顔に騙されて可哀そうだと許してはいけない。
たかが遅刻、されど遅刻。
むかしこの遅刻癖を母性本能が爆発してしまい私の判断ではなく私の中に眠っていた美奈子ママにより思考を乗っ取られ赤ちゃん言葉で思わず許してしまった事があるのだ。
その結果、遅刻を咎めようとすればあの時の赤ちゃん言葉という黒歴史の声真似をして許しを請い始めたのである。
そして今では黒歴史を聞きたくないが為に十分以内の遅刻ならば『咎めなくても良いか。あんまり待ってないし』と自分に言い訳をして咎める様な事はしなくなってしまった。
出来る事ならばあの頃の自分に正気に戻れと殴り飛ばしてやりたいくらいである。
「分かった。分かったからそんな怒った顔すんなしっ」
「おっ、怒ってなんかないわいっ!!それと頭を撫でのはやめいっ!!私は子供ではないといつも言っているでしょうっ!!」
そしてグランの悪いところは直ぐに私のアバターの頭を撫でるところである。
なまじアバターがイケメンである為惚れてしまいそうになるのを毎回我慢するのが正直辛いところである。
万が一惚れてしまいそれがグランにバレてしまった時の事を想像すればどうなるか、まず間違いなく引かれるであろう光景が容易に想像でき、そのおかげで何とか
その為、最早これは自分の中の煩悩に打ち勝つ心を持つ為の修行をしているのではないか?と最近思い始めてしまうのも仕方ないと私は思う。
そもそもスクールカースト最底辺であり異性との交遊が殆ど無いと言っても過言ではない私にとっては例えアバターと言えどもイケメンにじゃれつかれるという事に免疫などあろうはずがないではないかっ!
そう、悪いのはその事に気付かず振る舞うグランが一番悪いのだ。
これは確定事項である。
「あー丁度いい位置に頭がある方が悪い。それに子供ではないかもしれないが赤ちゃんかもしれないだろ?」
「な、何をっっ!!!」
「ほら、行くんだろ?」
「う、………うん」
そして私が必死に惚れそうになるのを耐えている等知りもしないグランは、私の手を無造作につかむと周回先へ行こうと急かす。
そういうトコだぞっ!!!グラン!!
と思うものの口にはせず、素直についていく私であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます