第2話ある種の快感

私が通う高校は可もなく不可もなく、と言った感じである。


強いて言うとするならば平均偏差値は県内では中の上。


部活はソフトテニスが男女、あと男子バスケと女子陸上が強豪校と言った感じである。


可もなく不可もなくな高校ではあるものの、見る人が見れば行きたいと思う高校でもある。


それが私こと山田美奈子が通っている小津北高校である。


そして私はというとこの高校の価値観は可もなく不可もなくの部類に入る学生である為当然の如く帰宅部である。


家から学校には路面電車が通っているのだが自転車で行こうが路面電車で行こうが通学にかかる時間は二十分から二十五分と言った感じで大差無く、ならばと私は自転車通学を選んだ。


理由としては運動というのもあるにはあるのだが、やはり一番の理由は帰り道に寄り道できる店が増えるという点であろう。


コンビニに書店、ゲームショップにスーパーと何でもござれだ。


「ただいまーっ!」

「お帰り。夕飯作ってるから手伝いなさいな」

「はーいはい」


そして私は帰宅と同時にお母さんの夕飯作りを手伝う。


以前までは手伝って無かったのだが私が高校に入学すると同時に選ばされた。


部活に入りお小遣いを貰うか、アルバイトする代わりにお小遣い無しか、母上の夕飯作りを手伝う代わりにお小遣いを貰うか、である。


そして私は当然クソば………お母様の夕飯作りを選んだ。


コレにはいくら何でも出来レースすぎた為、そこから推測するに『もう良い歳なのだから最低限の料理スキルはつけなさい』というお母さんの圧を感じざるを得ない。


そして夕食を作りを終えた頃になると仕事と部活からお父さんと妹が帰って来る為家族揃って夜ご飯である。


夜ご飯を終えてお風呂に入れば後は愛しき自由時間である。


私はパジャマに着替えて二階にある自室へ入るとSANYというメーカーが作ったPss5というゲーム機へ電源を入れてベッドに寝転ぶとヘッドギア型のVRゴーグルを装着し、見慣れた複数の企業のロゴを見た後ゲームの世界へと降り立つ。


「おはよう、ミナ」

「おはよう、グラン」


そして迎えてくれるにはゲーム内で結婚をしたゲーム内の夫であるグランである。


毎度の事ながら異性と名前をお互い呼び捨てで呼び合うのは例えそれがハンドルネームであったとしてもゾクゾクと、ある種の快感となって感情が満たされていくのが分かる。


初めはノリで結婚したのだからと敬語からお互いタメ口へある種の遊び感覚で変更して以降それが定着した形である。


「グランが私より早くログインしているなんて、珍しい事もあるものね」

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