第24話 高位魔族《ノーヴル》・ベムルボムル②
崩れる壁の土煙に紛れてお姉ちゃんが攻撃を仕掛ける!
しかしベムルボムルはことごとくを拳で打ち払う。
ときどき腹部の顔が口をあけて黒い槍を放つが、お姉ちゃんもそのことごとくをかわした。
もの凄い速さの攻防だ。
剣が効かないのなら守る必要などないのにベムルボムルは身を守る。
それはハッタリだからか、あるいは魔族のプライドか。
ベムルボムルの背中の顔が私を見つけると、また黒い槍を飛ばしてくるが、ワンパターンすぎて避けるのはもはや容易い。
地面を転がってそれを避け、私はそのままベムルボムルを狙い撃つ!
「
ズガアァァァンッ
ベムルボムルに向かって幾つかの石の棘が隆起する!
「ガアァァッッ!」
ベムルボムルが吠えた!
私の呪文は奴の脇腹を、太ももを、腕をとらえた。
続け様にお姉ちゃんがダメ押しの斬撃を首や手首へと加えて、いったん跳びのく。
身体中の顔の目がギョロギョロと動き回る。
「だァから──効かねェんだよォ!!」
ベムルボムルが私へ振り向きざまに滅びの魔力の球体を投げ放ってくる!
速い──!
立ち上がる余裕がなくその場をなんとか飛んで離れ回避する。
突然のことに受け身が取れず横転した。
「ちィ! ちょこまかしやがッて! だが、いいねェ、その怯えた心。あひゃひゃ! そういうの期待してたンだよ」
そう言いながら両手を広げ、再びデーモンを二体生み出した。
お姉ちゃんは素早く反応しその一体を処理するが、もう一体がすぐさま私に襲いかかってくる!
態勢が悪く避けられそうにない──
イチかバチかダガーを取り出して、デーモンの攻撃に応じる!
ガガギンッ
「ッ痛──」
デーモンの拳を両手で構えたダガーでなんとか受け止めたものの肩に鈍痛が走る。
「マリオン、寝て!」
お姉ちゃんの鋭い声が届く。
言われるまま私はすぐに背中を倒すと、
グォンッ
私の顔のスレスレをデーモンの足が振り抜かれた!
あっぶない──!
すぐに逃げるように地面を転がって立ち上がり、お姉ちゃんのほうへ駆ける。
入れ替わりにデーモンと対峙したお姉ちゃんはふりかかるパンチを受け流すと身をくるりと翻して袈裟懸けに一刀を斬り込んだ。
「大丈夫?」
「ぎりぎり、死ぬかと思った。ありがと」
お姉ちゃんの声がかからなければ、身体中の骨が折れていたと思う。
私たちはベムルボムルを見据える。
さっき貫いた箇所の一部は今も再生の途中のようだった。
「やっぱりただのデーモンじゃ相手にならねェなァ」
「強がりはやめなよ、効かないとか言ってるけど痛いは痛いんでしょう? 怪我も、治ってないみたいじゃない」
この場面で
「強がりはァどっちだよ! お前らの焦り、恐れ、わかるぜェ? 好物の香りだからなァ。あひゃひゃひゃ!」
魔族は生物の負の感情を食べる。
私たちにはわからないけど、彼らはその匂いを敏感に感じとる。
どんなにハッタリをかましてみせたところでバレバレだ。
「──ン?」
ふいにベムルボムルが部屋の入り口に振り向く。
私たちはそのスキに距離を取った。
お姉ちゃんの裾を引っ張って、いまだ転がりっぱなしの黒焦げ魔道士のところへ立ち位置を変えた。
ベムルボムルが見つめる先の入り口から男が一人現れた。
「なんで、ダンがここに来るのよ……」
モンク、ダン。
「これは……おいあんたたち、何をして──」
と私たちに言いかけるが、すぐに奇怪な形態の悪魔の姿に目を止めた。
「貴様は……」
そして言葉少なに状況を把握せんと部屋を見渡す。
私たちの足元の黒焦げの魔道士を見つけるや、ベムルボムルを恐れる様子もなく歩み寄ってきた。
私たちは突然現れたダンを警戒した。
だって、彼がここに来る真っ当な理由などあるはずもなく、あの異形の悪魔を目にして驚きも構えもしなかったのだから。
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