黄泉方舟

休日

　どこかへ出かけるような気にもなれない、日がな一日家でゴロゴロするくらいにしかやる気の出ない日が、ここ数日ずっと続いている。

　出かけようと思えばどこにでも行けるし、昔と違って、出かけるために三十分だか一時間だか掛けて準備する必要だってない。今や、どこにでも行けるし、どんなふうにだって過ごせる。むしろ、だからこそかもしれない。例えば、休みの日に、見たかったアニメや映画を見て一日過ごそうと思って、表示されるラインナップをずっと眺めてはスクロールし、数分再生してみて、気分ではない気がしてまたスクロールする。そうやって、いつの間にか休みが終わっているということが、昔はままあった。もしかすると、それに近いかもしれない。アニメや映画の代わりに、今は、人生を楽しむことに対して気分が乗らないのだ。きっと、そういうのが、ここずっと、数日続いていて、ことによると、向こう一週間とか、一年とか、数年、十数年とか、数十年とか、……。

＊

　少しだけ開けた窓の隙間から吹き込む風が、冷たさを帯びてきた。差し込む日差しも傾き、色味が濃くなってくる。じきに夜になってしまう。そろそろ潮時だな、と身を起こす。

　今日もおしまい。

　今日も何もせず、どこにも行かなかったけれど、暮れていく頃合いになってしまった今頃からどこかへ行ったり、何か意義のある時間を過ごすこともできないから、仕方ないのだ。

　仕方ない。そのことに、どこかほっとしている自分がいる。

　今日が終わってくれることが、少しだけ嬉しい。