7話 黒猫ちゃんに舞を見せてあげたよ。
雪の日に
人形は舞
こともなし
ねじ巻き黒句
お正月、この古い商家では、子どもの頃だけ見ることが出来る人形の踊りがある。
不思議と、大人になると忘れてしまうらしい。
その古い商家の2階の部屋が賑わうのは、都会に行った子どもたちが帰省した時だけだ。
しかし、外は雪が降り続け、静まり返っていた。
降り続く大雪のせいで、道路が通れなくなって、子どもたちは帰って来れないそうだ。
今黒猫の僕はこの部屋にいる。日本人形の踊りを見届ける為に。
「黒猫さんだけ?お孫さん達は来ないの?」
「・・・」
「うちの踊りが下手だから?」
「違うよ、ふふふ、僕の謀略で来れないようにしたんだ!
ふふふふ、僕は黒猫だからね。それ位の事は出来るんだよ。」
「ひぃぃぃぃ」
日本人形は驚き嘆いた。
「今年の冬は、僕の為だけに踊って!」
「ひぃぃぃぃ」
日本人形は、僕の為に寂しい悲哀に満ちた踊りを舞った。
「ふふふふ、良い踊りだったよ」
踊り終えた日本人形は、僕しか観客は居なかったけど、一応満足したようだ。
良かった。
「今日はうちの踊りを、見てくれてありがと」
そう言うと日本人形は、人形の棚に戻って行った。
人形に【お孫さん達は、大雪で来れない】これだけは言ってはいけない。
大昔、この人形の最初の持ち主は、大雪の日に遭難して、帰って来ることはなかった。
【繊細な心の人形に、あの日の事を思い出させてはいけない】
三毛の中将からの依頼だ。
だから今日の僕は、悪役を演じてみた。
さて温かい炬燵の中へと帰るとしよう。
三毛の中将からの依頼を終え、ほっとした後に詠んだ一句。
読んでいただき、ありがとうございます。(*v.v)。
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