5話 踊ってみたよ。


心地よい

金属音が

三毛を呼ぶ


        ねじ巻き黒句




オルゴール博物館に、タップダンスを踊る機械の人形があった。

それを幼い頃から見ていた箱入り娘の穂波ちゃんは、タップダンスをやりたかったんだけど、人見知りが激しくて、教室に通うことを断念した。


なんでも、その教室に、肌の合わなさそうな人が居たらしい・・・・

・・・・で結局、ネットで調べたりして、独学で踊り始めた。


小高い丘の上にある公園は、戦国時代当時、小さなお城だった。

今でも、石垣の跡が、いたるところに残っている。


夕方の誰もいない城址で、箱入り娘は、「感想言ってね」と僕の前で踊って見せた。そもそも黒猫の僕は、タップダンスとやらを知らない。


うん・・・でも、箱入り娘の鳴らす、タップシューズの金属音のリズムは、心地良い。さらに、穂波ちゃんの身体の動きは、場の空気を弾ませる不思議な魅力がある


ん?


その音に魅せられて、近づく気配を穂波ちゃんのボディーガードたる僕は感じた。

臆病な小動物故の研ぎ澄まされた感覚だ。


敵か?味方か?

俺の思考回路は、すぐに『味方』と回答した。


「誰?」

「私よ」


ほぼ化猫の三毛の中将が、藪の中から、スっと現れた。


三毛の中将の異様な殺気に、人見知りの箱入り娘、穂波ちゃんは、箱に入ったオルゴールのようになりを潜め、ヒョイと僕の身体を抱き抱え、異様な殺気を放つ三毛猫を眺めていた。


僕を抱きしめても、僕は何も出来ない頼りにはならない小動物だけど・・・

まあいいや。


しかし、なぜいつも三毛の中将が殺気を漂わせているのかは、未だ不明だ。


何かと闘ってるのかも知れない・・・もしかすると喧嘩の後だろうか?


穂波ちゃんのタップダンスが終わってしまい、ちょっとショボンな三毛の中将は言った。


「私は、すぐ人を怖がらせてしまう(苦笑)」


哀しげにため息をついたて


「しかし、良い踊り&音楽を聴かせてもらった。

お礼にお前たちが知りたいであろう事を、教えてやろう」


僕は猫語の解らない穂波ちゃんに、三毛の中将の言葉を伝えた。


「知りたい事?!えーなんかラッキー♪」


穂波ちゃんは僕の耳元で囁いた。

安堵の微笑みの穂波ちゃんに、抱かれながら、詠んだ一句



つづく

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