短歌4

星ぼしの擦れあう響き ケプラーは普遍音楽ついぞ聴かざる


星貌は密造されし 球断機ジュール・ヴェルヌの与り知らぬ


犬の首を少年刎ねし 灰色の地面に咒を誦しつつ昼下がり


金釘は錆となりゐつ古傷に沿い歩くゆえ陽は錆を灼く


屋上へ逃げるふりせよ昼の神ふらごなあるの画のなみぶりで


太陽にのみ用ゐたり尊敬語 ワ行七段変格活用


パパ、メール来たの先週飛び降りた子から。「あの時目が合ったでしょ」


萵苣ちしゃの種灼け太陽よ狼星シリウス文月ふづきに眠るアドニスがため


圓光は現れざりし祭壇図 烏賊墨セピアの塗料剥がれざるまま


RF-IDタグを纏いをり脳内アタマまで見よと圧政者待つ


やわらかき銃とけ落ちる 遺骨さえチェホフ紀来ればやがて埋もれる


食蟲花に絲紡ぐ蜘蛛その蘂に托卵の母帰らずや新婚のいつ枯れしとも熱帯気候旅行土産のサラセニア咲く


先天性欠翼症候群患者あらかじめつばさ失いしひとびとそのための人工翼力学


ふつくみし一寸法師ナボの跛者なり密浮萍みつふひょうあつめ網綯うヘパイストスは


黒犬は時計を見たり鍛冶場にて、夜開かれし隠秘学授業

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