第4話 龍の鉤爪

ただの、白い手紙。

家に帰ってからそれを眺める。

「……なーんか、見たことあるんだよなぁ……」

なんでだろ、なんて考えながらベットに寝転ぶ。

「……ちょっと駿、やめてよ」

「……え?」

汗臭い格好で僕のベットに寝転ばないで。

俺を退けてベットのシーツの皺を整える優。

優は俺の双子の弟だ。

俺と違って勉強一本で几帳面。スポーツなんて……と校庭を見ながら本を読んでいるような奴だ。二卵生だからか、余り性格も顔も似ていない。

二人合わせて優駿、なんて随分な名前をつけてくれたものだ。

「バスケに専念してるのは知ってるけど、勉強もしなよ?夏休み明け、テストなんだから」

はいはい、分かりましたよー……と机に向かう。やる気が出ない。

数分間、何の教科やろうかを考えていた時にふと優に訊いてみる。

「優、この手紙……見たことあったりする?」

優はこちらに視線を向けて……その目を少し細めてから言った。

「……さぁ……?」

……此奴……知ってやがる…

本人は気づいてないのかもしれないが、優は隠し事をする時に目を細める。それに此奴は知らないなら知らないと言う奴だ。

「…知ってるのか……」

「……さぁね」

僕は勉強するから話しかけないで。

そう言いたげに俺の話を聞き流す優。

「知ってるなら何か言えよ!」

机を思い切り叩く。ダン!と思ったよりも大きな音がして俺も、優も驚く。

暫くして、優は溜息をついた。

「……龍の鉤爪」

……は?

間抜けな声を出すと優は呆れ顔で言った。

「……龍の国への招待状。それが龍の鉤爪」

これでいい?と優は机に戻る。

「おい。これがもし、その『龍の鉤爪』だとして…なんでお前がそれを知ってるんだよ」

「駿、執拗い」

「なっ……」

そんなのくらい理解して。

そう言いながら、優は引き出しの鍵を開ける。そして何かを取り出した。

「……僕も貰ったからに決まってるじゃん」


……それは俺のものと同じ、『白い手紙』だった。

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