第1話 龍の目
7月27日。今日は快晴。
今日から夏休みが始まる。煩い蝉時雨とこんにちは。課題?そんなの俺は受け取ってない。
「駿ー、明日海行かね?」
「悪ぃ、明日部活」
マジかよー……と項垂れる石鍋隼風。
「タクもチーカマもマサも来るってのに」
「また今度な」
「坂城くん」
前の席の相河が振り向く。
彼女は才色兼備…と謳われる女子で、男子からも女子からも人気だ。
でも、俺は得意ではない。
相河はなぜか、よく俺に話しかけてくる。
「課題、持ってこなきゃダメだよ」
此奴はエスパーか何かなのか。
俺の思考回路をよく読めたな……と内心感心しつつ、「分かってるよ」と適当に答えておく。
「そんなこと言って。毎年毎年、何かしら終わらせてないじゃない」
相河とは、中学の頃からの腐れ縁だ。確かに毎年、何かしらを終わらせていないことは否定しない。でも、そこまで言う必要はないだろう。
「今年は終わらせるって」
「……本当にちゃんと終わらせてね」
私、今言質取ったから。
そう言って彼女は、帰りの支度をし始めた。
「_______」
「え……?」
相河は驚いた顔をしてこちらを振り向く。
「どうかしたのか?」
そう訊くと「……いや、今……」と彼女にしては珍しく、語尾を濁して何か言う。
そして、その小さな頭を横に振った。
「……ううん、やっぱり何でもない。」
……何でもない顔じゃないだろう。
まぁ、そこまで訊くと色々と誤解が生じてしまいそうなので訊かないでおいた。
「そうか。じゃ、またな」
うん…と相河は小さく頷き、教室を出ようとして……立ち止まる。
「坂城くん。______」
「……え」
何何?なんて言ってたの?と隼風が言う。
「は?お前、耳おかしいのか?」
「流石に酷くね?皆も聞こえなかったよな」
うん。聞こえなかった。沙羅ちゃんが言ったことでしょ?『坂城くん』までしか分からなかったよー
……教室はざわめいた。
俺は、暫く動けなかった。
何なんだ?俺が、おかしいのか?
俺は混乱する。
確かに彼女は言ったのだ。誰もに聞こえるような声で。
『坂城くん。___明日、龍が空を駆けるよ』
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