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「……い。……ーい。おーーい!」
誰かの声で飛び起きる。ゴツンと鈍い音がして、額に痛みが走っていく。
「痛……」
「いってー……何するんだ!」
何するんだ、なんて失礼な人!私はただ起きただけなのに!
そう言いたいのに声が出なかった。だって、そこに居たのは……折角起こしてあげたのにー…とぶうたれてるのは……
「どなた……?」
見ず知らずの人だった。
「ん?ボクはねー……」
その人の声を聞かずに私は思考を巡らせた。
なんで?私は家にいたはず。ってことは、この人は不法侵入者!?どうしよう……お母さんに怒られちゃう……
えーと、こういう時は何するんだっけ?
えっと、とりあえず!
「つ、通報しますよ!?」
裏返った声で言われてもねぇ……とその人は呆れ声で言う。
「……というか、ここ、君の家じゃないし」
「…え……?」
心を落ち着かせて周りを見る。右も左も木、木、木。上を見上げても辛うじて空は見えるか見えないか……そんな感じだった。
「……何…ここ……」
「『不思議の国』」
よく通る、中性的な声でその人は言った。
……不思議の国?そんな国名、見たことも聞いたこともない。そんな見ず知らずの国にいるなんて……まさか、この人が、私を!?
「や、やっぱり通報……!」
それ好きなの?と呆れ返った声でその人は言う。
「ボクは何もしてないよ。ただ、" 君が " 迷い込んだんだ」
「え、私が!?」
うん、とその人は頷く。そんな……私がふらふらと見ず知らずの国に迷い込むなんて…。
ダメダメ。しっかりしなきゃ。私は頬を叩いて道を進む。
「ん?どこ行くの?」
後ろからその人の声がする。私は歩む足を止めずに応えた。
「帰るの。……帰らないと、ダメだから」
ふぅん……とその人はつまらなそうに言った。
「じゃあ、精々頑張りなさいな」
その人の応援(してるつもりは欠片もなさそうだが)にありがとう、と返して道を進む。
「……まぁ、まだ帰すつもりはないけどね」
その人はニヤリと微笑んだ。
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