5-②
* * *
数刻後。
《フォルテ様、いいですか? まず最初に占うのが『
「水妃の宮?」
フォルテは霊騎士の
先に下見をしたゴローラモから、この宮は危険が少なそうだと聞き、とりあえず
《フォルテ様の
中央に
ゴローラモの話では、それぞれのエリアは
仮宮だけでも側妃用の居室が十室と
三貴妃はそれと同じ規模の宮をそれぞれに
それは
「なんだか一つのお屋敷みたいね」
《その通りでございます。それぞれの宮には、外の警備の他にご実家から連れてこられた五十人ほどの侍女や小間使いが住んでおります》
「ご、五十人? たった一人の貴妃様のために?」
つい大声を出してしまったフォルテに、前を歩いていたブレス女官長が
「先程から何を一人でブツブツおっしゃっているのですか?」
「あ、ごめんなさい。霊……そう、
「精霊?
その幽霊にどっぷり憑かれていたとも知らず、女官長は
「そのせいかしら。朝から変なことばかり……。
女官長がフォルテのヴェールに手をかけそうになったところで前方から声がかかった。
「ようこそ、青貴婦人様。アドリア様がお待ちでございます」
回廊の先の大きな門の前で三人の侍女がお
ふわふわした
髪をツインテールにして、みんな可愛らしい。
「では、私はここまでですので……」
ブレス女官長はそう言って頭を下げ、来た道を戻っていった。
どうやら女官長でさえ、この先は入れないらしい。
「どうぞ。青貴婦人様」
三人の侍女は、両開きの
そして一歩足を
「す、すごい……」
別世界だった。
ピンクの回廊に囲まれたとてつもなく広いエリアは
屋根のあるコテージが浮かんでいて、水面には鮮やかな花が散らばり、魚が泳いでいた。橋の手前には小型のゴンドラまで浮かんでいる。
「な、な、なんなの? ここは……」
《この先に見える
水路の先の正面にピンクの可愛い
ゴローラモの説明通り、三人の侍女はその入り口で立ち止まり、ピンクの
内部はこぢんまりしていたが、大きな窓は水辺に面していて、窓を開放すればそのまま外に出られるようになっている。水辺の
フォルテは部屋に入ると
「失礼
それとほぼ同時に「きゃあああ!!」という悲鳴が部屋の中から
ぎょっとするフォルテの
「お待ちしていましたわ!! きゃああ! 本物? 青貴婦人様?」
少女のような
侍女達と同じようにツインテールにして、やはりオーガンジーのふわふわドレスだ。
しかし、その
「アドリア貴妃様?」
まさかと思った。なぜなら、事前に二十八歳だと聞いていたからだ。しかし目の前の姫は、どう見ても十四、五歳に見える。自分より年上とは思えない。
「そうよ。ずっとお待ちしていたの。ああ、
「そ、そうですか。分かりました。すぐに占いを始めましょう」
「お願いしますわ。こちらに青貴婦人様の丸テーブルも用意しましたわ。どうぞ」
部屋の中はファンシーカラーとふわふわでいっぱいだった。
「ねえ、見て青貴婦人様。これはお気に入りの
部屋の置き物を次々手に取り見せてくれる。まるで子どものようだ。
「アドリア様、占い師様はお部屋に遊びに来たのではありませんよ。早くしないと占う時間がなくなってしまいますよ」
侍女の一人が困ったように
「ああ、そうだったわ。今日一日しか見てもらえないのよね。もっとずっといてくださったらいいのに!」
目の前の少女は八歳から時を止めたようだった。
「最近は陛下も全然遊びに来てくださらないの。つまらないわ」
遊びに……。そういう感覚なのか……。
愛した
「陛下のことがお好きですか?」
フォルテは聞いてみた。
「大好きよ! だってとても優しいもの。私のお願いをなんでも聞いてくださるの」
父にわがままを言う甘えん
ともかくこの姫は後宮の黒い噂とは無関係だろう。適当に占いだけして部屋に戻ろうとフォルテは心の中で思った。しかし、
「私が殺したの……」
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