3-③
「ではそなたもヴェールを外し、名を申せ」
クレシェンは
「そ、それは……ご
フォルテは心臓が飛び出そうになるのを必死でこらえて答えた。
「私の命令が聞けぬと? 反逆罪になりたいか?」
クレシェンはすでに得意の
「わ、私は極度の人見知りでして、人前でヴェールを外して
「占いの能力が?」
クレシェンは怪しみながらも考え込んだ。占いができないのは困るらしい。
「では名を申せ。どこの夫人だ」
「わ、私はさる貴族の方の妻でございましたが
ゴローラモとさっき慌てて考えた筋書きを口にする。
「なんだとっ!! 名も申せぬと言うか!!」
「どうかお許しを! 私にできることならなんでも致しますので、どうか……」
フォルテは両膝をついて
霊騎士ゴローラモまで膝をついたまま震えている。
「この女!
フォルテはもう今では目に見えるほどにガタガタ震えていた。
「どうかお許しを!」
いよいよ斬り捨てられるかと思ったが、クレシェンは
「まあよい。本題に入ろう。実は陛下の後宮の三貴妃様が青貴婦人をご
「……三貴妃様が?」
フォルテにも王の後宮の知識なら
二十年以上も前に重臣の三貴族から
「さ、三貴妃様が私などに何用でございますか?」
えらいことになってしまったとフォルテはまだ震えが止まらない。
「占い師なのだから占いをしてもらいたいのだろう。どういう相談内容なのかまでは私も知らない」
「う、占いをすればよいのですか?」
「そうだ。占いをすればいい。ただし何点か聞き出してもらいたいことがある」
「聞き出す?」
「そうだ。そなたも聞いた事があるだろう。後宮の黒い
「く、黒い噂……」
フォルテはごくりと
「後宮ではこれまで多くの死人が出ている。後宮に暮らしていた王子が二人に、妃は全部で五人。みな毒殺、転落死などの不審な死に様だ。おまけに
「そ、そんなにたくさんの死人と行方不明者が……」
フォルテは青ざめた。
二人の王子とその母の死しか
「占いをするふうを装って、
「そ、そんな大それたことを、この私が……」
クレシェンは知らないだろうが、まだ十七の小娘なのだ。いくら
「そ、それに占った内容を他人に
「できぬと申すか?」
クレシェンの
「はい。申し訳ございませんが……」
「では
「え?」
フォルテは
「先日の壺を、よもや私があっさり
「つ、壺……。ではクレシェン様は分かっていて……」
フォルテの額にじわりと
「当たり前だ! 壺を
フォルテは
「これはデルモントーレ国法、第五十四条、まやかしの価値で物を売りつけることを禁止する
フォルテは震える声で尋ねた。
「ご、ごうもん……とは……どのような……」
「まずは指の
「ひいいいい!! 申し訳ございません! お許しください! 病気の娘のためにどうしてもお金が必要で、出来心でやってしまいました。どうか……どうか、お許しを……」
フォルテはガタガタと
あっけなく白状したフォルテに、クレシェンは心の中で壺に効力がなかったのかと少しだけがっかりした。
「本来なら
「や、やります!! やらせてください!!」
フォルテは
「必ず王子と妃殺しの黒幕を見つけるのだ。何がなんでも聞き出せ!」
「は、はい。分かりました」
「万が一、何も聞き出せなかったら分かっているだろうな?」
「ど、どうなるのですか?」
青ざめた顔で見上げるフォルテに、クレシェンは悪代官の顔でにやりと笑った。
「一生牢屋で暮らしてもらうことになるな」
「そんなあ……」
アルトは尋問室でのクレシェンと占い師のやりとりを、
(クレシェンは善良な国民に、いつも陰でこんなことをしているのか?)
アルトや国のためなら平気で悪事を働くことができるのは分かっていたつもりだが。
(病気の娘がいると言っていたか。帰らぬ母をさぞ心配していることだろう)
何か力になってあげたいとアルトは思った。
(だがそれにしても……)
アルトには、一つだけ気になることがあった。
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