3-②
* * *
(ゴローラモ、いったいここはどこなの? 馬車の窓は
《フ、フォルテ様……、どうかお気を確かにお聞きください。
(この非常時にあなたの
フォルテは
《いえ、話したいのは自慢ではなく、つまり王宮に将軍用の一部屋を頂くほどの騎士だったのでございます》
(やっぱり自慢話じゃないの)
《で、ですから、
(住まった場所? つ、つまりここは……?)
フォルテは
《はい。
(な、な、な、なんでそんな所に私が?)
《こっちが聞きたいです。なぜこんなところに拉致されたのですか! ああ、親愛なるテレサ様。あなたの
(な、なんでそんな場所に? まさか! 霊感商法がバレて?)
《そんなチンケな犯罪で連れてこられる場所ではありませんよ。もしかして先日クーデターの占いをしたことで、仲間だと思われているのかもしれません》
(そ、そんな……。私は占いをしただけで、しかも成功しないって言ったのに)
《あの壺を買った青年。思い返してみれば王子様達のご学友の中に、神童と呼ばれる非常に頭の切れる少年がいました。モレンド
(さ、宰相候補? 王太子殿下の側近? まさか……)
だが、言われてみれば身なりといい、態度といい
(
そうとも知らず、壺を売りつけてしまったのだとしたら……。
(ど、どうしよう、ゴローラモ。もしも、もしもヴィンチ家の娘だと知られて家に押しかけられたら……。きっとあのナタリー夫人のことだわ。いい機会だと、私とビビアンをお屋敷から追い出すわね。自分達は無関係だと言って。そんなことになったらビビアンは……。どうしよう……)
《ビビアン様の心配より、まずはご自分の命の心配をなさってください。とにかく名を明かさないことです。できればヴェールも取らない方がいいでしょう》
(わ、分かったわ)
フォルテは事の重大さに
* * *
「やっぱり騎士の
アルトはクレシェンが立ち去った部屋で服を着替えながらダルに話しかけた。
「また騎士に変装するんですか? クレシェン様にバレても知りませんよ」
ダルは、
「だからもしもの時は、ダルがうまく
王宮に来てから部屋に
ありがたいことに王太子の部屋の寝室にはクーデターなどの大事の時に逃げるための隠し通路がある。寝室から後宮の仮宮に出ることができ、その後宮にはさらに王が外に抜け出るための隠し通路もあるらしいが、そこはまだ見つけられていない。
今のところ仮宮経由で王宮内部を散策するにとどまっている。
「ですが最近あまりに
「クレシェンが占い師に無茶を言わないか心配なんだ。こっそり様子を見てくる。少し様子を見たらすぐ戻ってくるから」
アルトは仕上げに肩にかかる
* * *
クレシェンが部屋に入ると、フォルテは立ち上がりドレスをつまんで貴婦人らしく
(やっぱりあの日壺を買った貴族の方だわ)
顔ははっきり見えなかったが背格好と、何より手入れのいい
フォルテの
そして霊騎士ゴローラモは、フォルテのすぐ横で片膝をつき拝礼していた。長く王宮を離れていたとはいえ、
「青貴婦人よ。そなたほどの力があれば、ここがどこか分かるかな?」
クレシェンは
「王宮……でございますわね、クレシェン・モレンド様」
フォルテは
「ほう。私の名まで分かったか」
(やっぱりゴローラモの言った通り、王太子殿下の側近、クレシェン様だった)
フォルテは改めてとんでもないことになりそうな予感に青ざめた。
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