第三章 公爵令嬢、拉致される
3-①
フォルテが
ヴィンチ家から馬車で
食材調達の手伝いという名目で、週に二日だけヴィンチ家のお
「今日の予約は一件だけだから、そんなに長くかからないと思うの」
「はい。私はいつものように森の中で食材になりそうなきのこなどを探しています」
「いつもごめんなさいね、ピット」
「いえ。食材集めのついでですから気にしないでください」
ピットが森の中に消えると、フォルテは青いドレスに
(大変。もう来られたのかしら? まだ予約の時間には早いのに)
《フォルテ様! お逃げください! 外の様子がおかしいです。黒服の男達がこの小屋を取り囲んでおります》
「え?」
しかしフォルテが行動を起こすよりも早く、戸口に男二人が風のように現れ
「きゃっっ!! 何をなさいますか!!」
《何しやがる! フォルテ様を放せ!! 放せえええ!!》
ゴローラモが
「お静かに。こちらの言う通りになさっていただければ、危害は加えません」
「言う通りにって……。こんな
「ある高貴な方がお待ちです。今からしばしお付き合い願いましょう」
「い、
「残念ながら我らと共に行くか、ここで死ぬか、
「な!」
《ふざけんな!! この
ゴローラモはすでに二十回は男達を斬り刻んだ。
だが
* * *
「この
アルトは
「はい。そうです。王太子
「ならばどこか
「いいえ。非常に高価な
「さすがに机の真ん中は
壺を動かそうとするアルトの手を、クレシェンはがしっと
「いいえ。これはアルト様のおそば近くに置きましょう。執務机が邪魔なら
「……」
アルトはクレシェンの様子に
「そういえば占い師に何を占ってもらったんだ?」
「ダルを
「ダルを?」
アルトは執務机から
「私も占いなどバカバカしいと思っていましたが、青貴婦人はさすがに話題になるだけあって大したものです。ダルがモテないことも、剣が下手なことも当てました。おまけにアルト様に、非常に有能な側近がついていることまで当てた時に、これは本物だと確信致しました。だから
「やっぱり私のことまで占ったのか。そんなことだと思った」
「そうでした! アルト様、今日はどなたかご
「ご令嬢? 会うわけないだろう。王宮に
父王が心配してというのもあるが、何よりこのクレシェンが心配
「占い師によりますと近々に大恋愛をする相手との出会いがあるようなのです」
「お前、すっかり占い師に洗脳されておるな。本当は壺も
「いいえ! 私が占い師の言いなりに壺を買うような
クレシェンは意固地に言い張ってから話題を切り替えた。
「残念ながら、女官や
「もしや、女官や侍女の中に? 最近新しく入った侍女はおりませんか?」
「いや、みな以前からいる母のような
「アルト様はもしや年上好みでは? この際、多少年配でも
「なんだ、急に。この前まで
「次に出会う相手と子を成さねば子宝に
「私が文句を言いたいがな」
すっかり占い師を信じている側近にアルトは
「ともかく、どうやって占い師に協力させるつもりなのか知らないが、手荒なマネはしないであげてくれ。気の毒な未亡人かもしれぬのだ」
「占い師なら、すでに
「な! 拉致? お前はなんということを……」
アルトは頭を抱えた。
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