1-④
アルトは
「そうして選んで、後宮の
デルモントーレ国では、前王の貴妃が次の代の
手始めに現王の母である王太后が死に、妃教育中に先代の貴妃一人が病死した。現王が母を亡くしたショックで正妃を決めることを後回しにすると、それを皮切りに現王の子を生んだばかりの貴妃二人が王子共々
そして子を生んだ側妃に三貴妃の座を
こうして現王の正妃が決まらぬまま後宮は三貴妃が
三貴妃の実家が、軽く
心を
そんな黒い噂の広がる後宮にアルトの見初めた姫君を
そもそも、この三貴妃に次世代の妃を教育するつもりがあるのかどうか。教育後、すみやかに後宮を出ていってくれるのか。
アルト達は妃や王子を殺したのは三貴妃である可能性が高いと疑っている。
あるいは三貴妃を使って、王家の血筋を
なんとかして、三貴妃には
「あの後宮がある限り、私は妃を持つつもりはない」
自分の母も
「そう言うと思いました。ですので実は秘策を考えております」
クレシェンは得意げに微笑んだ。
「秘策?」
「そうです。後宮に間者を送り込み、三貴妃様を調べさせるのです。そしてアルト様の兄上や現王の妃達を殺した黒幕を見つけ、その
「簡単に言うが、その間者とは?」
三貴妃は自分の宮を
クレシェンはにやりと
「実は最近
「三貴妃みんなが?」
「はい。女性というのは占いが好きなようでございますね」
「その『青貴婦人』とは何者だ?」
「先日さっそく
「もう偵察に行ってきたのか?」
アルトは相変わらず
「はい。その占い師をうまく
「なるほど。占い師になら貴妃達も胸の内を洩らすかもしれぬな。だが、その占い師をうまく抱き込めるのか? その者が
「やらざるを得ない状況に
クレシェンはすっかり
「ど、どういうことだ?」
アルトとダルは警戒するようにクレシェンを見つめた。
「これです」
クレシェンは足元に置いていた布の包みをアルトに差し出した。
「? なんだ?」
アルトは受け取ってそっと包みを開いた。
そこには見事なモザイク
「これは……故レオナルド壺師の作品ではないのか?
「先日占い師が、こともあろうにこの私にそばに置いておけば願いが叶うなどと
「お前が騙されたのか?」
「はい。もちろんわざとでございます。これをネタに占い師を
「いったいいくらで買った?」
「その時の持ち金すべて。一万リルも払いました」
クレシェンは得意げに答えた。
「お前は確か法律や政治経済には長けているが、芸術はさっぱりだったな」
「それが何か?」
「これは十万リル出しても足りないほどの逸品だぞ」
「……」
クレシェンは目の前の使い勝手の悪そうな壺を黙って見つめた。
「お前の方こそ詐欺師だな」
「と、ともかく占い師にこの証拠を突きつけるのです。そして言うことを聞かねば裁判にかけて
「どう考えてもお前の方が罪が重いな」
アルトは会ったこともない『青貴婦人』が気の毒になった。
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