1-③
* * *
「アルト様、ご決断ください」
王宮の一室では栗色の巻き毛を垂らした、容姿にも服装にも隙のない、あるいは
その横には肉の
「決断? このくだらぬ議案のことか? クレシェン?」
アルトは
長い金髪を後ろで束ね、黒に近い葉緑の瞳を険しく
「はい。今最も重大な議案でございます」
クレシェンと呼ばれた男は、王太子の
「これのどこが最も重大な議案なんだ!」
アルトは議案の書かれた羊皮紙を側近に広げてみせた。
「ダル、読んでみろ!!」
ダルは
「おい、顔!! 油断しきってるぞ!」
あまりの人相の悪さに、アルトは
「待て! 怖過ぎる。そのぐらいでいい」
「はい。失礼致しました」
ダルは
「一カ月後の秋の
アルトは深く
「これのどこが重大議案だ! くだらん!!」
「先日の議会にて国王
「だからといって、まだ王にもなっていないのに早まり過ぎだろう」
「いいえ。
「それは違うだろう。気になる
「なんと! 私のせいだと申されますか! これほどアルト様一筋に仕える私の!」
ショックを受ける側近に、アルトは慌てて言い直した。
「いや、お前の
実はアルトの二人の兄は後宮内で暗殺されている。父王は残された王子達の身を案じ、後宮から出して
アルトだけが無事だったのは、このクレシェンの知力と、彼の実家で
クレシェンの隣ではダルが眉を八の字に下ろして油断している。
「ダル! 顔!!」
ダルは慌てて眉を吊り上げ、鬼軍曹の顔に戻した。
このダルの泣く子も黙る凶悪な人相と、毒を
その二つの能力を買われて、幼い頃からいつも二人のそばにいるダルだが、恵まれた巨体を持ちながら剣の腕前はからっきしだった。
一年前、譲位を決意した父王がアルトを王宮に戻した。最後の一人となった
その時ダルが
こうして
しかし正式に王となるなら、もう隠れてばかりもいられない。
今度の舞踏会が
「アルト様。急がねばならないのです。今度の舞踏会で未来の
なぜか
「舞踏会を開いてガラスの
「シンデレラでも
「今選んじゃいかんものが一つ混じってなかったか?」
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