第15話 新たな力と属性

辛い…苦しい…熱い…僕また死んだのかなぁ。今回の人生は短かかったな。この世界の闇を拭う為にやって来たのに結局何も成し遂げる事が出来なかったじゃん。フィルフィラー様ごめんなさい。せっかく新しい命として転生させてくれたのに結局役立たずで終わってしまったのだ。神様に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


 フィルフィラー様有難うございました。短い間でしたが転生後の人生も少しは楽しめましたよ。ちょっとだけ心残りはありますが、その、ちょっとと言いますか魔法だけ。魔法だけ使いたかったのです!正確には魔術をぶっ放したかっただけなのですが、魔力に目覚める前にどうやら力尽きてしまった様です。この後はどうなるのでしょうか?三度目の転生なんて流石にそんな美味い話は無いでしょうし、このまま魂が天国へと昇華されていきますか?


 

 そのようなことを夢の中でぶつぶつと独り言を言っていた。暫くして、ふと、周りを見渡すと以前にも同じ様な空間にいたことを思い出していた。そう、前回転生する前にいた暗闇の場所に非常に似ていたのだ。

 しかし、前回と少し異なるのは暗闇の中に非常に薄っすらと淡い光が点々と足元に輝いている。そしてその光がまるで“その先に進みなさい”とでも言うかの如く一直線に続いているのである。


 僕は前回無闇矢鱈に走り回っていた事を思い出した。今回はきちんとこの道標に素直に従って歩いて行けばいいだけなんだと確信していた。精神的な負担が段違いであった。



 30分程歩いて来ただろうか。足元の光のある間隔が短くなっている気がする。さらに光が大きく明るくなっている気がした。いったいこのまま進めば何が起こるんだろう。少し不安な気持ちが大きくなっていた。


 それから一抹の不安を抱えたまま僕は歩を進めることを止め無かった。暫く進むと光が途中で途切れる箇所が視界に現れた。最後の光のある場所まで踏破した僕はその場で立ち尽くし次の道標はないかと周囲に目を凝らしていたが、何処にも道標なんて呼べるものは無かったのである。そして、今まで進んで来た道にあった筈の光ですら完全に消えていたのだった。



 「フィルフィラー様、フィルフィラー様。申し訳ありません。せっかく僕の魂を新たな世界にへと紡いで下さったのに世界の闇を払う事が出来ず力尽きてしましました。ごめんなさい。役立たずですみません。そして、今度こそ僕の魂を…って眩しっ」


 この場所にまで導かれた事はきっと何かしらの理由がある筈だと解釈した僕はフィルフィラー様に謝罪と今後の希望を伝えてみようと上に向かって話かけていた時、周囲が突然明るくなったのだった。思わず目を閉じてしまった僕は暫く両目を開く事が出来ずにいた。


 

 「ブルメールよ目を開けてご覧なさい。」


 僕が眩しさのあまり目がやられてしまってその場に蹲っていたところ、不意に眼前から女性の厳かな声が聴こえて来た。思わずハッと顔を上げ両目を見開くと目の前に格の高いテーブルと椅子そこに座って手編みをしているフィルフィラー様がいらっしゃった。


 「フィルフィラー様。その僕は神様に謝らなければならないことが…」


 「よい。ブルメール。汝もそこの椅子に腰掛けるのです。」


 目の前に突然現れた神様に思わず謝罪の言葉を口にしてしまった僕に対してフィルフィラー様は僕の言葉を途中で遮り、椅子に座る様にと言ってきたのである。


 「フィルフィラー様。つかぬ事をお聞きしますが、僕は天国に行けるのでしょうか。」


 僕は椅子に座り目の前でひたすらに編み物をしている神様に開口一番にそう尋ねてみた。


 「汝は何か勘違いをしている様ですね。ブルメールよ。汝は死んでなどいません、確かに生きていますよ。汝は今まさに強力な力をその身に宿そうとしているのです。汝の身体に対してその力が少し大き過ぎのです。それ故に身体が耐え切れずに意識が途絶えたのです。今は汝の身体がその力に順応しているのです。時期に身体に馴染むことでしょう。」


 「えっ、死んでいないのですか。フィルフィラー様。力って魔力の事で間違いないのでしょうか?」


 「そうです。汝には今、魔力が芽生えようとしているのですよ。この世界に存在する全ての生きとし生けるものは魔力をその身体に有しています。人間にも勿論ですがある時期を過ぎると皆魔力を手にするのです。殆どの生物は生存する為に必要不可欠な力しか持ちませんが、稀に魔力を多く保有する個体が現れるのです。人間では貴族階級の人々がそうです。他の生物の中においても魔獣と呼ばれているのです。

 汝の魔力は我が少し手を加えた事により貴族の中でも少しばかり大きなものとなってしまったようです。通常他の人々より多くの魔力を持つ貴族の幼児が魔力に芽生える際、全身に少しばかり熱を帯びるだけで済むのですが、ブルメール、汝の場合は熱量が増加してしまったのです。」


 神様の説明を聞きなんだそういうことか。と心の中で安堵した。


 「フィルフィラー様。僕が手にする魔力の属性は何でしょうか。前世には本やゲーム、漫画など創作物の中でしか存在しなかった力をこの世界に転生した僕が手にすることができるのがとても楽しみだったのです。教えて下さい神様。」


 「ふふふっ。それを今教えてしまってはつまらないでしょう。ただ汝には面白い力が芽生えていますよ。目覚めた時に楽しみにしておきなさい。」


 「はい。一刻も早く自分の力を知りたいです。それから魔術の鍛錬をして色々な魔法を使用してみたいです!」


 「そう、貴方ならその力を正しく使う事ができそうですね。その力で世界を救う大きな武器となるでしょう。時期に目覚めることでしょう。お話はもうお終いです。是非その力を武器に世界の闇を払うのです。」


 そう言言いながらフィルフィラー様はにこりと微笑んできた。僕がもう一度「はい。頑張ります神様。」と返事をした途端視界が真っ白な光に包まれた。




 「ブルメール、気付いたか!いきなり倒れ其方を救護室に運んできたのだ。薬師に見てもらったが魔力が目覚め初めているのだそうだ。身体に異常はないらしい。明日からは魔術の鍛錬を初めないといけないな。今日はゆっくりと休みなさい。」


 僕がフィルフィラー様との再会を終え目覚めた時には騎士団本部の救護室のベッドに横たわっていた。どうやらショーフラムお父様が急に意識を失った僕を慌てて担ぎ上げ此処まで運んでくれたそうだ。


 「うっ、おとうさま。ありがとうございます。」


 まだ全身に熱と息苦しさを感じながら僕は身体を起こしながら返事をした。


 「こらブルメール。無理に身体を起こす必要などないのだぞ。魔力が目覚めた時に倒れてしまったのだ。今は安静にするんだいいね。俺もお父様も今日の仕事を終えたら帰宅するからもう暫く此処で寝ているんだ。いいね?」


 そう優しくユシャルールお兄様が声をかけてくれた。僕は分かりました。と返事をしてユシャルールお兄様の言いつけ通りに身体をベットに戻し、2人が部屋から出て行くのを見届けてから。側に置かれていた水を飲み、瞼を閉じた。



 「ブル、ブルメール起きるんだ。仕事が終わったからもう帰るぞ。」


 凡そ2時間程寝ていただろうか。身体の熱もある程度冷めて息苦しさは殆ど感じない程にまでになっていた。ユシャルールお兄様に身体を揺さぶられながら起こされた僕は、お父様とお兄様と3人でそのままいつもの様にお兄様の飛行獣に乗り家へと帰宅した。




 家に着くと訓練中の知らせが届いていたのかオーフロイドお母様とアドモンド爺様が出迎えに来ていた。そして、既に夕食が用意されており、家族で夕食をした。皆はステーキやスープ、バゲットなどいつもの美味しそうな料理長のメニューであったが、僕は消化の良いものという事でリゾットと具のないスープであった。

 その日の疲れが溜まっていた僕は食後の談笑はせずに、アドモンドに連れられて湯汲みを済ませ、寝巻きに着替えさせてもらい、すぐにベットに入った。




 次の日の朝、アドモンドに起こされるよりも早く目覚めた僕は朝陽が差し込むカーテンの隙間に目を奪われていた。いつもよりも早く起きたせいだろうか。この世界の朝陽が前世のものよりも寄り黄色ががった綺麗な色であるということに今更気付いたのである。これからは従者に起されるよりも早く起きるてみようかなそう思った秋の早朝であった。



 僕はいつものように寝巻きに着替え、顔を洗うために洗面所に向かう事にした。まだ皆んな寝ているかもしれないと思い足音を立てないように寝起きの顔を擦りながらゆっくり歩みを進めた。ようやく洗面所に到着した僕は側に置かれている脚の踏み台を持ち上げ、洗面台の手前に配置した。そして、踏み台の上に上がり顔を洗おうと水を出そうとした時にふと自分が今まで一度も魔法具に魔力を流して水を出した事がないという事に気がついたのである。そういえば、いつもオーフロイドお母様かユシャルールお兄様かクリスグレイスお兄様もしくは筆頭従者のアドモンド爺様に顔を洗うのを手伝って貰っていたからである。


 「ん〜魔法具に魔力を流せば水が出てくるってことは分かっているんだけどな。流し方が分からないしどれだけの魔力を流せばいいのか分からないし、どうしよう、、、」


 フィルフィラー様やお父様、お兄様に昨日言われ通り、僕は昨日確実に魔力を芽生えた筈なんだけれど使い方迄は誰にも教えてもらったことが無かったのである。勝手に見様見真似で使用して、洗面台にある魔法具を壊してしまったり、使えなくしてしまってはいけないしどうしようと僕は考えていた。


 「勝手に使って何かあったら怖いから、水を出すのは諦めようかな。仕方ない、一旦部屋に戻ってアドモンド爺様が起きてくるのを待つとしよう。」


 そう言いながら僕は踏み台を元の位置に戻して洗面所を後にしようを洗面所に背を向け部屋から出た瞬間洗面所に入ろうしてたショーフラムお父様ぶつかってしまい、その場に尻餅をついてしまった。


 「なんだ、ブルメールか。すまない気が付かなかったのだ、ほら起きなさい。」


 そう言いながらショーフラムお父様は僕の手を掴み自分の方へと引き寄せながら僕が立ち上がる手助けをしてくれたのだった。おかげで僕はすんなりと立ち上がる事ができたのである。


 「ありがとうございます。それからおはようございますショーフラムお父様。」


 僕がはショーフラムお父様にお礼と朝の挨拶をした。


 「おはようブルメール。珍しいではないか、早朝にブルが起きているとは。それより、洗面所にいたのに顔が濡れていないようだが、何をしていたのだ?」


 流石はお父様である。僕が毎朝顔を洗いに来ていることは知っているので、洗面所から出てきた僕の顔が一切濡れていない事を怪しく思ったのだろう。僕が洗面所で何をしていたのか尋ねて来たのである。


 「はい、お父様。その、実は魔法具に魔力を込めてるやり方を知らなくて…。勝手に使用して壊してしまったらいけないなと考え、自力で顔を洗うのを諦めたのです。それで一度部屋に戻って皆んなが起き始めたら誰かに手伝ってもらおうと考えていたのです。」


 「そうか、そうだったんだな。よし!そういう事であれば我が教えようではないか。ブルは昨日魔力が目覚めたであろう?まずは身体の中の魔力を感じてみるのだ。目を閉じて集中してみなさい。身体の中の熱が集中している場所が幾つか感じ取れるだろう?やってみなさい。」


 “やってみます”そう言って僕は瞑想するかの様に瞼を閉じ心を落ち着かせて全身の熱を感じてみた。そうすると、熱は常に全身を巡っている様で、さらに、お父様が言った様に身体の何箇所かに熱が集まっている場所を感じ取ることができたのである。


 「両脚と両手、それから頭と胸背中に強く熱を感じました。お父様胸にある熱が一番熱くて大きい気がします。」


 「ふむ、ブルが今感じたのは体内に多く魔力を有する場所だ。そして、ブルが今胸に一番熱を感じると言ったであろう?そこは心臓という臓器がある場所だ。心臓は主に血液を全身に循環させる為の臓器だ。心臓が動きを止めるとヒトは死んでしまうのだよ。魔力も心臓を通して全身に運搬されるのだよ。そして、全身の重要な箇所に魔力が溜まるのだよ。魔力を流すのは主に両手からだ、ブル両手にある熱を少し魔法具に押し出す事を想像して魔力を流してみるといいぞ。やってみよ。」


 「教えて頂きありがとうございますお父様。やってみます!」


 僕はすかさず洗面台に戻り、踏み台をセットして上がり、洗面台にある魔法具に触れてみた。今まで触った時には何も感じるなかったが、魔力が目覚めてからは触れた瞬間に熱が奪われる感覚があった。恐らく一定の熱、魔力を込めれば魔法具から水が出てくるのだろうとそう思った。


 僕は魔法具に触れたまま右手にある熱を意識して、右手の熱を心太を押し出すかの様に熱を放出してみたところ、魔法具から水が勢いよくドバドバと流れ出てきたのである。驚いた僕は慌てて魔法具から手を話してみたが、魔法具からは暫く水が出てきた。30秒程勢いよく流れて来た水はすぐに勢いが弱まり暫くしてkら完全に水が止まった。


 「ブル、魔力の込めすぎだ。日常生活の魔法具は平民でも使用出来るように作られているから少量の魔力を込めるだけで使用できるんだ。ブルは魔力保有量の多いのだ、今度は指先から少しずつ魔力を流してみなさい。」


 「分かりました。お父様。」


 僕hsお父様に注意された様に今度は魔法具に指を三本だけ軽く置く様にして触れてみて、少しずつ雫を垂らす如く魔力を込めていった。

 雫を数滴垂らしてみると、魔法具からはちょろちょろと水が流れ始めた。今度は上手くいったみたいで僕は両手で水を受け止め顔を3回洗った。もう完全に目が覚めていたので顔を洗おう必要はなかったんだけどね。


 「よくできたなブル、これからは一人で顔を洗うんだぞ。魔力の使い方に慣れる為にもな。」


 僕の頭を撫でながら、お父様は僕を台から降ろし自分の顔を洗い始めた。顔を洗った僕はお父様にお礼をし朝食の時間まで少し時間があるので一旦自分の部屋に戻ることにした。



 「坊っちゃま、朝食の用意ができましたよ。早くリビングへ参りましょう。」


 暫くして、アドモンド爺様が僕の部屋のドアをノックしてきた。お父様から僕が起きている事を聞いたのだろう部屋に入ってくることはせず呼びかけるだけであった。

 僕がすぐに部屋を出ると、爺様がおはようございます坊っちゃまと挨拶をしてくれたので僕もおはようございますと挨拶をした。今日はもう顔を洗い終わっているので寄り道はせずにリビングへと歩いていった。



 「おはようブルメール。今日はとても早起きだったと伺いましてよ。それからお父様に魔法具使い方を習ったのですってね。良かったですわね。」


 「おはようございますオーフロイドお母様。お父様に教えて頂いたおかげでとても一人で顔を洗う事ができるようになりました。」


 「おはよう、よかったじゃないかブルメール。これからはもうお前の洗顔を手伝わなくてもよくなったのか、少し淋しい気持ちだな。子供の成長は早いもんだな。」


 お母様に洗面所の魔法具を使えるようになったことを褒められたが、ユシャルールお兄様には僕の成長が嬉しい反面少し寂しいらしい。


 「ユシャルールお兄様、洗顔はもう1人で出来るようになりましたが未だお兄様には手伝ってもらう事が多いので、これからも手助けして欲しいです。」


 そう僕が言うと周りには苦笑され、ユシャルールお兄様には「あぁブルメール」と恥ずかしい顔をさせてしまった。


 「では、朝食を頂くとしようか、本日はクリスがもう学院に向かって行ったので4人で食べるとしようか。」


 本日のメニューはクロワッサンとスクランブルエッグ、それから燻製されたハム、コーンスープにサラダだった。僕達は頂戴しますといって食事を始めた。



 「ブルメールよ。本日からは基本の鍛錬に加えて魔術の訓練もしなければならぬ。本部に行ったらまずブルの魔法の属性を知ることから始めないとな。」


 食事をしながらお父様が今日の予定を教えてくれたのだった。僕は自分の魔法属性をこんなにも早く知る事が出来るとは思っていなかったので一気にテンションが上がってしまった。


 「お父様今すぐ本部にい行きたいです!屋敷には属性を調べる魔法具はないのですかっ!」


 そう勢いよく前のめりになりながらお父様に尋ねてしまった。


 「そう慌てるでない。魔法属性を調べる魔法具は貴重な物でなエースアナ王国には各領地に1つずつと王都に1つしかないのだ。ル・ベリエ領には騎士団本部に魔法具が設置されているのだ。もうしばらくの辛抱だ。」


 「そうなんですか…。」


 と先程までの勢いが無くなり、椅子に腰掛けた僕に対して思わず笑みが溢れたユシャルールお兄様が


 「ブルは早く魔法の属性を知りたいみたいだが、恐らくお父様と私と同じである炎属性か、お母様とクリスと同じ属性である氷属性を持っていると思うよ。今日の鍛錬が楽しみだな。」


 そっか、そういえばお兄様は両親の魔力属性の影響を受けている。普通に考えれば簡単な事だったのに、僕は遺伝で属性が決まるということを忘れてしまっていたのだ。

 しかし、単に魔法の属性といっても炎属性と氷属性では大きく異なるしどちらの魔法を使いたいのかと僕は前世のゲームや漫画を思い出しながら自分が魔法をぶっ放している姿を想像していた。



 そんなことを考えているうちに食事の時間と談笑も終わり、僕達はいつも通りにお父様とお兄様と一緒に、お兄様の飛行獣に乗せてもらいながら騎士団本部にへと向かった。




 そして、騎士団本部に到着するといつもは訓練場に向かうのだが、今日は本部棟にある魔力・魔法属性測定室へと向かった。「へぇ〜そんな部屋があるのか」と思わず口にしてしまった僕はお父様とお兄様それから、騎士団本部の職員さんに連れられて、魔力・魔法属性測定室へと入っていった。


 「魔法具に魔力を込める方法はご存知ですね?それでは此方の聖杯に触れて見て下さい。こちらの聖杯が魔力と魔法属性を測定できる魔法具になっています。」


 そう職員のクインさんに言われて僕は目の前にある金色の80cm程の大きさがある聖杯の外側の真ん中に埋め込まれているダイヤモンドの様な宝石に触れて両手を当てて触れてみた。


 「うわぁっ」


 僕が両手で触れてみた瞬間、両手から身体中の魔力を物凄い勢いで吸い取られていくのを感じ思わず驚いてしまった。家の洗面所にある魔法具と比べて吸い取られる量が比べ物にはならなかったのだ。



 僕が聖杯に魔力を吸い取られて40秒程したあと、僕は全身の魔力量が減少していることを感じ、全身に疲労感が襲ってきた。そのまま立つのがしんどくなった僕は、聖杯から手を離してしまった。

 次の瞬間、聖杯の中に少しずつ水が満たされていき、聖杯の中に荒波が生じ、今にも聖杯から溢れそうな様子であった。


 「ほう、ブルは水属性か。我の炎属性でもオーフロイドの氷属性でもないとは想定していなかったぞ。」


 「ブルやったね、属性が違ったのは少し残念だけど、ブルは6歳にしては魔力量が多いし魔術師になるのもいいのかもね。」


 「はい、ブルメール様は6歳にして普通の貴族の15歳程の魔力を保有していると思われます。これから、魔術に専念してみるのもいいかと思います。」


 お父様お兄様それからクインさんにそう言われ僕は想定していなかった魔力属性と共に、約10歳も年上の貴族と同じ程の魔力保有量を持っているということに驚きを隠せなかった。


 「水属性か…。」




 この日を境に魔法の鍛錬の日々が始まろうとしていたのである。

 

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