第8話 経験と結束
部員増えて賑やかになった開聖高校クイズ研究部の活動は全体の強化をしながら、僕達3人の経験を積む事だった。全国大会が終わってからというもの、これまでに4つ程中部地方の大会に出場して来たがその度に明優高校が出場して優勝していき、僕達のチームは苦汁を嘗めていた…。一度たりとも敵わなかったのである。
しかし、大会に出場する度に僕達の実力も伸びて来ている事が実感してきた。暫くは惨敗が続いていたが、いつしか後少しのところで惜敗する事が多くなっていった。明優高校も僕達の実力が上がってきたことを感じとったのか、更に実力伸ばしていき、中部地方の大会では、1位が明優高校クイズ研究部、2位が開聖高校クイズ研究部という結果が常になっていた。
結果として、高校2年生の出場した大会では彼等に勝つことができないまま、僕達は3年生、高校最後の年となった。
僕は3年E組に一つ上のクラスに上がることができた。クイズ研究部の活動を通して様々な知識が嫌でも身に付いたからだ。
拓真や英ちゃんは相変わらず3年D組で学年のトップ争いをしている。まぁ僕とは頭の構造が違うから2人に勝ちたいだなんて微塵も思っていないんだけどね。新しく一年生が10人も入部してくれたクイズ研究部の部長が然程勉強できないなんて事は避けなければならない。
3年生になってからというもの、周りの同級生は皆受験モードで部活に力を入れている人は非常に少なくなっている。それもそうであるこの開聖高校は一応自称進学校である。毎年65%弱の生徒はどこかしらの国公立大学に進学するのである。もう開始の火蓋は切られたのだ。
しかし、僕は今年最後の高校生クイズ選手権で優勝することを諦めていない。ここまで来たからにはもう後には引けない。目指すは優勝だけだ。そんな思いを抱き、今日も僕は部室に向かった。
「やぁ皆んな、今年も全国大会優勝目指して頑張ろう!」
開口一番に僕がそういうと、新入生達は苦笑していたが、僕達の本気度を知っている6人は皆頷いてくれた。
「拓真、英ちゃん早速練習しよう。ほら皆んなもメニュー通りに練習するんだ。大会は待ってくれないぞ」
僕達が練習に勤しんでいると、「受験勉強はいいのでしょうか?」と新入生の誰かが呟いたが気にせずに僕は問読みを開始した。
そうこうしている内に、1学期の中間テストを終え、高校生クイズ選手権の参加を申請する時期がやってきた。
「今年参加するチームを選抜するの為に部内で試合をしよう!参加できるのは勝ち抜いた2チームだけだ。」
締め切りが一週間前に迫った今日、部内で選抜する為にクイズ大会を催した。結果は僕達のチームが優勝して、去年からずっと活動していた後輩チームが二位となった。
「じゃあ、この2チームの参加を申請するよ。今回は参加出来ない皆んなも来年の出場を目指して頑張ってくれ、そして、僕達の応援を宜しくお願いします。」
山之内先生に選抜の結果を伝え、参加申し込み書類を完成させ郵送にて参加手続きを完了させた。
そして、参加が受理された。それから僕達は毎日のように練習に励み最後の追い込みをしていた。去年の今頃とは練度が違うというか、実力だけではない、チームの一体感の差が明瞭だった。このチームなら全国大会優勝も夢じゃないよ。そう楽観視していた…。
中部地区大会前日の放課後、後輩達に問読みしてもらいながら僕達は2チームで試合形式で最終調整をしていた。すると、去年と同様に優しく扉を開いて山之内先生が入室してきた。
「皆さんお疲れ様です。明日は中部地区大会ですから本日は早く切り上げて明日に備えて下さい。皆さんならきっと予選通過すると筈です。あまり気負いせずに適度に緊張感を持って気楽に挑みましょう。頑張って下さいね。参加しない皆さんも先輩達の勇姿を目に焼き付けるのですよ。」
先生にそう言われた僕達は手早く帰り支度を済ませ、部員の皆んなで帰路についた。
「拓真、英ちゃん、今年こそ決勝進出しような、目標は全国大会優勝だ!」
「新、拓真。一年間この日の為に努力してきたんだもの、絶対に決勝進出して海外に3人で行こう。」
「新も英ちゃんもやる気は十分だな。高校生活最後のクイズ大会だからな、悔いなく行こうぜ、勿論結果も伴うようにな。」
「あぁ」3人の目指す方向が同じであることを確認して改めてチームの団結力を認識した。
「じゃあ、また明日、寝坊すんなよ。」
「拓真と英ちゃんこそ、最寄り駅集合な!。おやすみ」
そうして僕達は解散した。
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