第7話 新入部員

 全国大会決勝進出の夢は潰えてしまった僕達は、来年こそ必ず決勝に駒を進める事を三人で誓った。


「おはよう!新、英ちゃん。今日からまた練習するんだろ?来年の高校生クイズ選手権のために。」


 拓真が得意げに笑ってそう言った。全国大会が終わったばかりだが最後の夏休みの部活の日、3人でこれからのクイズ研究部の活動について話あっていた。


「そうだよ、拓真。この悔しい気持ちを来年の大会優勝に向けての糧にするんだ。」


「そうね、でも来年の高校生クイズ選手権よりも、それまでに幾つか中部地区でクイズ大会があるから、それらの大会に出場して場馴れと経験を積むっていうのはどうかしら?」


「そうだね、僕達に足りないのは圧倒的に経験だね。参加できるクイズ大会には出来るだけ参加しよう!山之内先生にも伝えてくる。」


 来年に向けての方針が固まった。これからまたクイズ研究部の活動は続いて行くのである。



 夏季休暇が終わり始業式の日の放課後、部室に直行した僕は見知らぬ生徒が6人居る状況にハテナマークが頭の中で一杯になった。あれ。部室間違えたかな。そう思った瞬間、生徒の中に拓真がいることに気付いた。頭一つ飛び抜けていたからだ。なんだよもっと直ぐに気付けよと心の中で思いながら僕は口を開いた。


「拓真、えぇと、その6人は…?」


 僕の声に気付いた彼等は一斉に僕の方に振り向いた。


「新、喜べ!入部希望者だ。皆んな俺達が全国大会に出場したことで興味を持ってくれたらしい。ほら皆んな、部長の美海新だ。入部届を渡すといいよ」


 そう拓真がいうと、皆んなが「どうぞ宜しくお願いします」といって1人づつ入部届を手渡してきた。「こちらこそ宜しくお願いします」といって1人1人の入部届を丁寧に受け取って行く。こんなに新しい仲間が増えるとは想定していなかった。全国大会進出を機に入部してくれる人がいればいいなと思っていたが、いきなり6人も部員が増えたのである。喜んびを抑える事ができない。正直このまま3人だけではいつか廃部の可能性が高かった。


「新入部員の皆んな拓真からクイズ研究部の活動について説明を聞いておいて下さいね。それからもう1人部員がいるのですが、後程紹介します。僕は今から皆んなの入部届を山之内先生に提出してきます。」


 そう言って僕は嬉々として部室を後にした。



「失礼します。山之内先生はいらっしゃいますか?」


 僕の方に気づいてくれた山之内先生が僕の方に歩いて来て下さった。


「どうしたのですか?美海君」


「実は先程部員に訪れたら入部希望の生徒が6人いまして、全員入部届を持って来ていました。男子4人、女子2人が新しくクイズ研究部に入部したいそうです。これ入部届ですので確認宜しくお願い致します。先生」


「おや、もう新入部員ですか、これも君達3人の努力の結果ですね。全国大会は残念な結果に終わりましたけど、来年に向けて頑張って下さいね。新しい部員達にも向上心を持って頑張って欲しいですね。皆んなを引っ張っていって下さいね。美海君。部長として期待していますよ。」


「はい、腐らずにこれからも前を向いて努力します。ですのでこ、これからもクイズ研究部のご指導の程よろしくお願い致します。」


 「勿論ですよ。」と優しく先生が笑って下さった。よし、これからも頑張るぞと思った僕は、先生に質問がある事をすっかり忘れていた。


「先生待って下さい。まだ相談事がありました。来年の大会に向けて経験や場馴れの為に中部地区で行われるクイズ大会に出場しようと思っているのですが、許可して頂きたいのです。」


 席に戻ろうとしていた先生を引き留める形になってしまったがきちんと伝えることができた。


「いいですよ、早速これからの活動についてしっかり話し合っていたのですね、頼もしいですね。経験を重ねて、知識と技術を身につけて下さいね。」




 先生との話しを終え、部長に戻ると英ちゃんも部室に来ていた。


「英ちゃんは皆んなとの顔合わせは終わっている?」


「つい先程皆んなと挨拶したわ。私が来るまで拓真がクイズ研究部の話しや競技クイズの説明をしていてくれたみたい。もうチーム分けも済んでいるみたいよ。」


 流石拓真、仕事が早い。僕も部長として皆んなを引っ張って行かなきゃ


「では皆んな、仮のチームができたなら、今3チームできているはずだから、それぞれのチームに分かれて問読み1人回答者2人に分かれて練習しよう!」


 僕達がチームを結成した時と同じように練習メニューを組んでみた。全体の強化ができたら個人戦やチーム戦ができる筈。その為にまず競技クイズに触れてみないとね。



 そうして部員が増えた開聖高校クイズ研究部は活気溢れた部活となっていった。



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