第5話 練習と対策

 英ちゃんが副部長になった次の日、部室に行くと二人が既にクイズ本を手に話合っていた。夢中で話している二人僕の存在は気付かれていない…。


「二人とも何しているの?」


 思い掛けずそう話しかけてしまった僕にようやく気付いた二人がバッと僕の方に振り向いた。


「新か、今英ちゃんと練習メニューを考えていたんだ!今年の高校生クイズ選手権出場するんだろ?勝ち抜いて行くためにはきちんと練習する必要があるだろ?」


「そうよ新。二人で考えメニューを確認して。異論が無ければこのまま行こうと思うの。」


 二人で今日一日考えていてくれたのだろうかと嬉しくなり、二人が考案した練習メニューを受け取ると、そこには放課後の2時間半みっちり詰まった予定が書かれていた。

 最初の90分間で30分毎に問読みと回答者をローテーションする。そして、10分間休憩して残りの50分間で問題の復習をする。その日の自分が誤答してしまったあるいは答えられなかった問題をノートに纏める。といったものだった。

 そして、土日や平日の隙間時間に自分で作問し、次の週に問題として問読みする事により自分とチーム二人の全体的な強化に繋がるというものである。凄い、本当に良く出来ている。流石学年1位と2位だなぁ。


「このメニューで行こう!このメニューで練習すれば着実に実力をつけることができると思う。読ませて押しやポイント押し、勝負押しなどの練習にもなるし、自分で作問する事で新な知識と問題作成側の意図も汲み取り易くなるしね!早速今日からやってみようよ!」


 

 そういって僕達は練習メニューを今日から実践していった。



「問題作るのって結構難しいよね、ベタ問と被ってしまうこともあるし…。」


 土日に作問挑戦していた僕は翌週の部活中にそう呟いてしまった…。


「新、そんなに難しく考えなくてもベタ問やクイズ問題集に掲載されている問でも作ることに意味があるんだよ。それに、何度も答えることで忘れにくくなるだろ?だからベタ問は絶対に他のチームに回答権を渡したら駄目なんだ。」


 拓真にそう指摘された僕はこれからどんどん作問する事を誓った。



 それから毎日の様に3人で早押し機を2つ用意して問読みと回答をローテーションしていてから三週間が経過した。6月半ばを過ぎていた僕達は高校クイズ選手権に出場する為の書類を郵送した。



 参加が受理され夏休みの8月の初週に行われる地区大会を突破する為に毎日学校で練習する日々だった。



「問題! アインシュタインにより相対性理論が提唱されたのは…」


「はい、新」


「1905年!」


「正解、じゃあ次 問題! 世界三大ブルーチーズとはゴルゴンゾーラ、スティ…」


「はい、拓真 ロックフォール!」


「正解、じゃあ次 問題 …」



 地区大会の予選が前日に迫った本日も英ちゃんが問読みで僕と拓真が回答者で練習をしていた時、不意に部室の扉が開かれた。この優し扉の開け方は山之内先生だろう。そう考えていると、英ちゃんに余所見をしないでと注意されてしまった。

 案の定入室して来たのは山之内先生だった。先生は僕達の問答がひと段落する迄優しく見守って下さった後口を開いた。


「本日の練習はここまでにしましょう!明日は早いですからね、皆さん寝坊しないように!今日までの努力を見て来たので皆さんはきっと予選を突破できますよ。さぁ帰り支度をして下さい。」


「分かりました。先生。明日は予選突破するぞ、拓真、英ちゃん!」


「当たり前だろ」

「そんなこと言わなくても分かっているわよ。」


 3人と先生とで円陣を組んだ後でそれぞれの帰路についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る