第3話 強力な仲間

『クイズ研究部新入部員募集!クイズ好き同士達よここに集え、そして目指そうではないか!高校生クイズ選手権優勝を!! 勿論競技クイズをやってみたい方、雑学が好きな方、仲間と楽しく新な知識を得たい方なども大歓迎です!!』



 部員募集掲示板にこの様な厨二病を拗らせた張り紙をしてから3日経過したものの…未だに入部希望は誰一人として現れない…おかしい…何で誰も入部してくれないんだろう。このままではぼっちでクイズすることになる、、、高校生クイズ選手権に出場する為には最低3人必要なのに、、、



「おい新、入部希望届はお前渡せばいいんだよな? それから、新学期始まって直ぐならともかくもう5月の初週だ、中間テストがあるのに新しい部活に入部する奴はあんまり居ないと思うぞ!4月から他のクラブに所属している奴は尚更入部しないだろう。まぁとにかく俺がクイズ研究部新入部員第1号だよな!これから宜しく!新」


 いつもと変わらぬ声量だが拓真がわざわざF組までやってきて入部希望届を持って来てくれた。このまま1人だけのクラブで廃部になるのではと危惧していた僕にとって拓真は神様に感じられた。


「たくま……有り難う、、、本当にありがとう…このままじゃ高校生クイズ選手権出場できなかったんだよ!」


「何言ってんだよ、俺は入部するって此間話したじゃないか、今更そんな感謝されても困る。これから最強のチームを作るんだろ?そうだろ?新」


 得意げな顔の拓真が破顔した時、それまで絶望していた自分が馬鹿らしくなって来た。拓真は入部してくれるって言ってくれていたことをすっかり忘れていたからだ。


「そうだよ!全国の他の進学校のクイズ研究部なんて相手にならない様な最強のチームを作るんだ!」


僕は腰に手を当てながらガッツポーズをして気合いを入れて宣言すると


「もう少し現実を見ろ新、クイズは偏差値や頭の良さとはイコールではないが、全国の数多の進学校のチームを凌ぐには相当な練習と対策が必要だぞ、それに俺もお前も競技クイズ経験者では無いだろう?たかがクイズ番組やクイズ本でクイズを嗜んできたただのオタクじゃないか、、、相当な努力が無いと不可能だと思うよ。」


「ぐっ」


 拓真に指摘されるまで自分の意識の甘さに気付いた僕は言葉に詰まってしまった。そうだ!僕はただのクイズオタクだ、競技クイズ経験者ではない。


「まぁそれはともかく、新中間テストは大丈夫なのか?去年は赤点幾つか取っていただろう?部長が赤点取って部活が出来ない何て事にはなるなよ!」


「それは……」


「仕方ないな、今日の放課後から中間テストまで自習室でお前の勉強の面倒を見てやるよ!」


「ありがとう!拓真」


 拓真と2人で新入部員の勧誘方法と中間テスト対策を話し合っていたらF組の教室に見知らぬ女子が入室して来た。



「澄空君。今日の日直の仕事まだ終わっていないよ。早く終わらせないと自習室のキャレルデスクが取れなくなってしまうじゃない。ただでさえ試験前二週間は席の争奪戦が激しいというに…」


 誰だろう、内部進学生で拓真の事を知っているということは2年D組の生徒かな。ん?ってことはかなり頭良い人なんじゃない?知的なオーラが凄い漂っている。一つ結びの髪にシルバーの眼鏡をしたいかにも優等生って感じの女子だった。


「拓真?」


「あぁ、優木さんすまないね。新とクイズ研究部についての話をしてたんだ。直ぐに教室に戻るよ。じゃあ新また後で勉強道具を持って自習室に集合だ。」


「りょーかい!拓真」


 拓真が教室から出ようと歩みを進めた時


「今クイズ研究部って言った?澄空君? 確かこの学校にはクイズ研究部何て無かったはず…。」


 優木さんが首を傾げながら拓真と僕を見つめた。疑いの眼差しで見つめられ返す言葉が見つからなかった。


 すると、少し前にいた拓真が振り返りニヤッとした笑みを浮かべた後、もう一度振り返った。


「優木さん、新が3日前にクイズ研究部を立ち上げたんだ!まだ部員は俺たち二人だけど中間テストが終わったら本格的に部員集めをして高校生クイズ選手権優勝を目指すんだ!」


 拓真が声高々に宣言すると、優木さんは少し考え込んだ後嘲笑うかの様な笑みを浮かべた。


「高校生クイズ選手権優勝?無理に決まってるじゃない、開聖高校よりも偏差値の高い学校なんて幾らでもあるでしょう?それらの高校のクイズ研究部のチームに勝てるとは到底思えないんだけど…」


 そんなことは分かりたくもないが自分でも分かっている。悔しい気持ちが溢れてきた。何か言い換えそうとした時拓真が優木さんとの距離を詰めた。


「俺も新も幼い頃からクイズが大好きだったクイズオタクだ!確かに競技クイズには慣れていないが、これから練習と対策するつもりだ!他のチームに負けるつもりはないよ!もしあれだったら、優木さんもいかがです?クイズ好きなんでしょう?違いますか?」


 フッと笑いながら拓真が言い返すと優木さんは何かを企んだ顔をした。


「わかったわよ!私が開聖高校クイズ研究部を最強のチームにしてあげる!」


 はい?新入部員が増えたことは嬉しいことだが、部長である僕よりもクイズ研究部の主導権を握りそうな人物に僕は尻込みをしてしまった。



こうして、開聖高校生クイズ研究部は新たな仲間が2人加わったのである。

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